3月2日(月):コロナ・ジェノサイド(5)~デマ
新型コロナウイルスに関連して、さまざまなデマが生まれている。当然、そうなるであろうとは思っていた。確かな情報が欠如している状況ではデマが流布しやすい。これはオールポートをはじめ、社会心理学者たちが指摘するところである。そのデマに従って人が行動すればするほど、そのデマが実現していくという悪循環も生まれる。
デマの発信源、つまり最初の言い出しっぺということであるが、この中には真面目に情報を発信した人もあるだろう。中には愉快犯みたいなのもいるかもしれないけれど、発信源の皆が皆そうとは言えないだろうと僕は思う。
その発信源から人伝えに伝わっていくうちに情報が歪められていくのだろう。ちょうど伝言ゲームみたいに、だんだん最初の内容に付加物が付け足されていくのだろう。ここで付加されるのは伝言者の心的投影物であると僕は考えている。
いくつか、僕が知った限りでのデマを拾ってみよう。
トイレットペーパーがなくなるというデマがあった。原材料が中国から輸入できなくなるために生産がストップするだろうという話だったが、これはデマであるそうだ。
このデマに流されて、ペーパーの買い占めが始まった。多分、この中には転売目的の輩もおるだろうと思う。いずれ店頭から消えるということであれば高額でも購入する人が現れるだろうし、それを狙って転売して儲けてやろうなどと考える輩も出てくるだろう。
僕はこういう転売屋を一番嫌悪する。マスクが不足しているのに、ネットでは購入できたりする、それもかなりな高額で。最初から転売目的でマスクを買い占めた連中がいるだろうと僕はにらんでいる。
転売屋の話はさておき、トイレットペーパーってそんなに使うかな。ウォシュレットが普及しているご時世だとペーパーはあまり使用されないのではないかと思う。僕個人で言えば、ペーパー1ロール消費するのに一か月以上はかかる。そんなに買い占めなくてもよさそうなものだ。3か月分程度のストックがあればいいということであれば、一人3ロールあれば十分である。
そして、このデマに踊らされて人々が買い占める。本当にトイレットペーパーが手に入らないという状況が実現してしまうわけだ。
50何度かのお湯を飲むとウイルスが死ぬというデマもあるそうだ。テレビで見たけれど、こまめに水を飲んでウイルスを胃腸に流し込むという手があるそうだ。そしてウイルスを排泄してしまうということなのだろう。おそらく、そのような情報が歪曲されたのだろう。ウイルスが死んで欲しいというのは、伝言者の心的投影ということになるだろうと思う。
ウォッカのスピリタスは消毒になるそうだ。アルコール度数96度にもなると、さすがに消毒用アルコールと変わらなくなる。もちろん、呑兵衛は飲んでも良しだ。
酒を飲んで消毒するという酔っ払いの理論がある。あれは酩酊することでウイルスの不安をごまかしているだけで、その程度の効果しか見込めないものだ。要するに、不安喚起材料の存在を一時的に忘れるだけの効果である。酔っ払いの言うことはかように当てにならないものである、そのことの証明である。
実際、こんだけコロナだコロナだと騒がれているのに、呑み屋では呑兵衛が密集している。呑んで忘れているだけで、別に呑兵衛たちの精神力が特別に強いわけでもないのだ。
さて、デマではないけれど、マスコミの報道が過剰だという批判もあるそうだ。僕は、別にマスコミの肩を持つわけじゃないが、その批判は不可であると考えている。と言うのは、報道が過剰であるかどうかは、事態の正確な情報に基づかない限り判断ができないからである。
ウイルス感染者の致死率が3%程度だと言う、3%を多いとみなすか少ないとみなすかは明確な基準がないので何とも言えない。この致死率というのは、ウイルス感染者のうち死亡した人の割合を示しているわけだ。ところが、分母の部分が不明である以上、この数字をそのまま信用していいかどうかも分からないわけだ。疑いのある人全員に検査を実施して、分母の数がかなり信頼できる数字になってからでないと致死率は当てにならないと僕は考えている。
もしかすると、致死率は0.3%かもしれないし、30%かもしれない。後者のようなこともあり得る。他の病気で死亡した人も感染していなかったかどうかを明らかにしなければならないわけだ。正確なデータに基づかない以上、その報道が過剰であるか否かは判断できない。
それにマスコミの報道が過剰だと言う場合、何が過剰なのかも考慮しなければならないと思う。感染予防に関しては過剰すぎるくらいでも僕は構わないと考えている。政府の政策批判なんかは過剰に報道してもあまり意味がなさそうである。過剰報道してオーケーの事柄もあればアウトの事柄もある。報道の内容を吟味しなくてはならないわけだ。
さて、余談であるが、こういう病気に関する情報はWHOの発表したものを第一に僕は信用する。WHOは世界レベルで調査しているから、僕は一番に信頼する。
一国内だけの調査とか、学会や団体の調査は、別に信憑性が低いというわけではないけれど、WHOの調査と結果が異なった場合、僕はWHOの方を信用することにしている。
つまり、これはデマなんかでも同じで、何かアヤフヤな説が流布し始めたら、より信頼性の高い人なり機関なりの言葉を信用した方がいいということである。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)