2月7日:VIVAマカロニ~『ザ・サムライ 荒野の珍道中』 

2月7日(火):VIVAマカロニ~『ザ・サムライ 荒野の珍道中』 

 

 ジュリア―ノ・ジェンマ、トーマス・ミリアン、イーライ・ウォラックの三大マカロニスターの共演作。1974年作品。 

 

 有名な保安官ブラック・ジャックは保安官の給料を運搬中、有名な詐欺師スイス・チーズの一計にはまり、金と馬を奪われてしまう。 

 その後、スイスは汽車に乗り込むが、そこに妙ちくりんな二人が入ってくる。サムライと足軽のサクラである。彼らは日本天皇からアメリカに献上する名馬シンミの護衛の任務ついている。その夜、先住民族の襲撃を受け、シンミは奪われてしまい、サムライも殺されてしまう。なんとかシンミを取り戻したいサクラであるが、スイスととも獄中の人になってしまう嘆くサクラにスイスは脱獄を持ちかける。 

 やがて、シンミの身代金を要求され、その受け渡しにブラック・ジャックが選ばれる。ところが、これも敵の罠であり、身代金は奪われてしまう。彼の命も危ないが、牢屋から脱獄したスイスとバッタリ遭遇する。さらには駆け足でシンミを追いかけるサクラも合流し、三人の珍道中が始まる。 

 町に着くと、三人は女装して町を占領したギャング団を倒す。また、陰謀を働く黒幕たちとは先住民族と手を組んで戦う。 

 逃げようとするスイスと阻止するジャック。サクラがそこにまた絡んできて面白いやりとりもあり、アクションもある。内容は申し分ないといったところだ。 

 

 最後まで任務を全うしようとするブラック・ジャックに、最後までペテンにかけようとするスイス・チーズ、そして最後までサムライに憧れる忠実なサクラと、三人のキャラが面白い。 

 ブラック・ジャックをイーライ・ウォラック、スイス・チーズをジュリア―ノ・ジェンマ、サクラをトーマス・ミリアンが演じる。トーマス・ミリアンはいろんな役をこなせる人であることを再確認できる映画だ。ジェンマは相変わらず運動神経抜群で、軽妙な役どころはハマってる感じがする。 

 その他、ギャングに襲撃された町で、男たちがみな牢屋に入れられているシーンがある。牢屋の中から事情を説明する男はヴィクター・イスラエルだな。あの顔はインパクトがあるのですぐわかる。 

 

 それにしても、この映画を作成した人たちは日本を知らないな。あんな足軽はいない。し、あんなサムライもいない。ウイスキーをラッパ飲みするサムライなんて見たことがないな。それに西部時代はサムライと足軽の時代ではないのである。時代錯誤があるわけだ。しかも、彼らの喋るヘンテコな日本語も可笑しい。日本人から見ると不自然すぎる。 

 監督は数々のマカロニを製作したセルジオ・コルブッチで、マカロニ作品としては最後の監督作品になるそうだ。「ジャンゴ」をはじめ、「ジャガー」「ガンマン大連合」などの傑作を生みだしたマカロニ監督が最後に行き着いたのが本作ということか。それも悪くないなと思っている。 

 

 1960年代の半ばに爆発的なヒットを飛ばしたマカロニウエスタンだが、一つが売れると次から次へと亜流の作品が生まれる。やがてマンネリするようになる。60年代後半頃は、さまざまなアイデアを盛り込んでマカロニの世界も百花繚乱の観を呈してくる。70年代になると、マカロニは下火になっていくが、それでも新しいアイデアを用いて命脈をつないでいく。本作のようなコメディ調の作品もあれば、スパイ調のものもあり、カンフーを取り入れたのやミュージカルなんてものもある。全盛期は過ぎたけれど、この時期のマカロニもまた面白いところがある。 

 本作が公開された1974年とはどういう年だったろう。70年には大阪万博もあったり、73年にはブルース・リーが当たり、東洋への関心が高まっていたかもしれない。そこで日本のサムライを絡ませたマカロニが作れるのではないかと製作陣も考えたのかもしれないな。そして日本のことを何も知らない面々が、日本のイメージ、サムライや足軽のイメージだけで作ったのかもしれないな。日本人は別の意味で楽しめるけれど、日本が大いに誤解されそうでもある。 

 いずれにしても、本作僕の好きなマカロニウエスタン一作である。 

 

寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

 

 

 

 

 

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