2月5日(日):VIVAマカロニ~『さすらいのガンマン』
ネイティブの集落を襲い、頭の皮を剝ぐダンカン一味。その時から一味は一人のナバホ族に後をつけられる。唯一生き残ったジョーである。
ダンカン一味は街に着き、暴れる。バーにて、昔の仲間から列車強盗の話を持ちかけられる。多額の現金を積んでおり、ダンカン一味が襲撃し、昔の仲間はその金庫を開けることができるという。
バーの主人と踊り子たちはすきを見て逃げ出すが、一味に追われることに。ジョーが助けに入り、列車強盗の計画を知ることになる。ジョーは単身列車強盗団に立ち向かっていく。
一味から列車を奪還したジョーは、町の保安官となり、ダンカン一味に戦いを挑む。
僕の文章では面白さが全然伝わらないことと思うけれど、スピーディーに展開する物語が面白い。
バーの主人たちが馬車で逃走し、ジョーが助けに行くところなど、平原を馬で疾走するシーンがカッコいい。格闘もスピード感があってスリリングだ。
ジョーを演じるのはバート・レイノルズだ。なんとも若い。後の70年代や80年代のダンディな姿しか知らない僕には彼の魅力を再発見することになった。バート・レイノルズにも若い時代があったのだ(当たり前か)。
悪役のダンカン演じるのは、これまた僕の好きなアルド・サンブレルだ。悪役が多いけれど、どちらかと言えばボスの手下を演じることが多く、本作のようにボスを演じるのは珍しいかも。それだけに僕の中では本作の価値が高いのである。
町に住むネイティブ女性をニコレッタ・マキャベリが演じる。『君主論』のマキャベリの血筋を引いているそうであるが、エキゾチックな顔立ちの美人さんである。
町の神父さんをフェルナンド・レイが演じている。スペインの名優だ。こういう神父役がピッタリくる感じを受ける。
その他、ダンカンの昔の仲間であり、今は医師として町の名士となっているドクター・リンをピーター・クロスが演じている。『荒野の1ドル銀貨』の悪役が僕には印象深いのだけれど、本作もいいキャラである。悪から足を洗ったはずであるのに、悪であることが止められないのだろうか、そういう分裂したキャラをこなしているように僕には見える。
あと、ダンカンの部下の太っちょはクリス・ヒュエルタだ。踊り子たちの色気におびき寄せられるという軟弱な悪役であり、どこかユーモラスでもある。
監督は数々のマカロニ作品を作ったセルジオ・コルブッチ。
本作の一つのテーマはネイティブとアメリカ人との関係にあるとも思う。かつてはネイティブの頭の皮を買っていた白人たちは、今では法律が変わったということで、過去の自分たちのことは棚に上げて、今でもそれをするダンカンたちを犯罪人と糾弾する。
ジョーは町を守ろうと協力を申し出るが、ネイティブというだけで信用されず、申し出も却下されてしまう。町に住む白人たちは、自分たちの生命や財産が脅かされているにも関わらず、それでもネイティブだけは疎外するのである。こういう差別も描かれている。
また、ジョーが町の保安官に任命しろと求めた時、保安官はアメリカ人でなければならないという理由でジョーは断られる。その時、ジョーは自分はこの土地の生まれであり、父親もこの土地の生まれであり、父親の父親もこの土地で生まれた、外国から移住してきた者と比べて、どちらがアメリカ人だという主張をする。見事な論破である。白人はここに住み着き、居住権を得ているから自分はアメリカ人であるという理屈なのだけれど、ネイティブはずっとこの土地に生きているから自分たちこそアメリカ人であるというわけだ。実はどちらも理屈としては正しいのではないかと僕は思うのである。ここには国籍アイデンティティさえそれを証明することが困難であることが示されているようにも思う。
さて、本作はともかく面白い。アクションシーンもふんだんにあり、バート・レイノルズが大活躍する。そのアクションシーンも疾走感があって、見ていて爽快な気分になる。悪役のアルド・サンブレルももちろんであるが、脇を固める俳優さんたちがすべていい。
僕の本作の評価は4つ星半だ。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)