2月12日:VIVAマカロニ~『待つなジャンゴ引き金を引け』 

2月12日(日):VIVAマカロニ~『待つなジャンゴ引き金を引け』 

 

 1967年のマカロニウエスタン作品。 

  

 牧場主である父親が殺され、売上金10万ドルが奪われた。息子がその復讐を果たすというのが本作の骨子である。 

 

 父を殺されたジャンゴは、銃を取り、妹と叔父を残して復讐に旅立つ 

 父親を殺し、カネを奪ったのは、アルヴァレスをボスとする強盗団の一味であるナヴァロである。ナヴァロの息子のチコが、親を裏切って、その金を奪って逃走する。もう一組の父―息子である。 

 チコを追うナヴァロ。同じくナヴァロを追うジャンゴ。チコはある村へ逃げたが、そこで殺されてしまう。金はグレイという男が横領したのである。村で鉢合わせしたナヴァロとジャンゴ。ここで復讐が果たされてしまうのだが、ジャンゴもまた金の行方を追う。 

 村の後始末屋バリカがジャンゴに協力するようになる。一方、アルヴァレスの方も殺し屋を雇い、ジャンゴを始末しようとする。やがて妹にも敵の魔手が伸びる。グレイも村の外へ金を持ち出そうと策を練る。三者三様の動きを見せることで物語が展開していく。 

 

 しかしながら、物語はそれなりに面白いのに何か物足りなさもある。「マカロニウエスタンDVDマガジン」の100巻目のDVDであり、さすがにマカロニに飽きてきたころに見たので僕の中では印象が薄いのであるが、どうやら要因はそれだけではないようだ。 

 まず、ジャンゴの目的は父の仇討と金の取り戻しという二本柱である。前者があっけなく方が着くところに物足りなさを覚えるようだ。そして、金を奪い返すことが主眼となってしまっているところが今一つという感じである。これが逆であったらよかったのにと思う。 

 一方、悪役がなんともハッキリしないのである。黒幕はアルヴァレスであるのだが、自分の雇った殺し屋に殺されてお終いになる。要するに、主人公に倒されるわけではないのだ。そして、横槍の殺し屋と主人公が最終対決することになるという構図になっている。この流れも納得いかない。殺し屋を倒して、ボスも倒すくらいの方が、ありきたりの展開かもしれないが、良かったとも思うのだ。 

 出演している俳優さんたちには申し訳ないが、悪役にパンチがないのである。マカロニの悪役といえば限りなくサイコパス野郎なのが魅力なのだけれど、本作の悪役はなんか普通の悪役に見えるのである。その辺りも物足りなさを覚える。 

 ジャンゴとバリカの関係性も今一つ感情移入できない感じである。友情やなんかが生まれるのかと思いきや、そういう印象を受けないのである。どこか淡々としたパートナーといった感じを受ける。 

 ジャンゴの妹を演じているのはラーダ・ラシモフである。この女優さんは美人だと思う。僕の好みに的中している女優さんなのだけれど、今一つ、彼女の魅力が薄いという印象を受けてしまう。父を殺され、兄が出ていき、叔父も殺されてしまうという不幸が立て続けに起こる役柄なので、翳を帯びるのは仕方がないところであるが、どうも彼女の魅力が乏しい。まあ、これは完璧の僕の個人的趣味の領域だったな。 

 ユニークなキャラも現れる。ツケにされることをぼやく棺桶屋だの、いちいち画面に割って入ってくる呑兵衛だの、物語に直接コミットするわけではないけれど、作品を面白くする人物たちである。こういうチョイ役の人が印象深かったりする。 

 

 ジャンゴを演じるのはアイヴァン・ラシモフ(ショーン・ドット名義)。妹役を演じるのはラーダ・ラシモフで、現実の兄妹でもある。 

 バリカを演じるのはイグナチオ・スパラ(ペドロ・サンチェス名義)。この人はキャラがいい。主人公の相棒役なんかはハマリ役のように思える。 

 悪役たちは、アルヴァレスにジーノ・ブッツァンカ、ナヴァロにシーザー・オヒナガ、グレイにセウゾ・ファリアといった面々が演じる。悪役でも小粒な感じを受けてしまう。 

 棺桶屋にはフランコ・ペシ。飄々とした雰囲気が面白い人だ。 

 

 さて、難点ばかり挙げたけれど、一応、普通に見ても面白い作品ではあると思う。凡作から秀作のあいだ辺りの位置づけを僕はしている。ただ名作には及ばない。まあ三つ星くらいの評価だ。 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

 

 

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