2月12日(水):これで良かったのだ
今日も無事に一日を終えることができる。こういうのが幸せである。特に問題になるようなことは起きず、それなりに前に進み、成果があった。完璧は求めず、高望みもせず、着実な一歩であれば僕はそれで十分だ。
少し空き時間が生じた。今日は不要書類をすべてシュレダーにかける。面接中に取ったメモ等も処分する。
少しずつモノを減らす。5月連休には大掃除をするので、その準備も兼ねている。大掃除をしようと思ったら、室内にモノが少ない方がいい。
昔、クリニックに居た頃に僕が書き写した記録がある。これもワードで入力して、紙の記録は処分しようと思う。
これは何の記録かと言うと、インテークの記録だ。初回面接分だ。さらに言えば、初回だけ受けて継続しなかった人たちの記録なのだ。
僕はそこのクリニックをリストラされたのだ。僕は先生に頼んで、もう一か月だけいさせてくれと頼んだのだった。その一か月の間に盗めるものは何でも盗んでやろうと思ったのだ。このインテーク記録は盗んだものの一つだ。仕事の合間を縫って、密かに書き写していったのだ。今だったら写メに撮るんだけれど、当時はノートに手書きで書き写したものだ。
盗んだと言っても、クライアントの個人情報は盗んでいない。記録の中身だけを書き写す。名前はイニシャル、あと年齢と性別、おおまかな職業を書き残しているが、名前や住所、連絡先などは盗んでいない。
それをワードで打ち込む作業を今日から始めることにした。一日5ケース分くらいを打ち込めば、2月中には終わるだろう。せいぜい100ケース分くらいのものだ。
しかし、打ち込んでいて思うのは、これ、確かに失敗するわ、ということだった。そんな思いに駆られることが度々ある。重要なことが訊けてないのだ。表面的な事柄しか記録されていないのだ。まるで履歴書だなと思うような記録の人もある。
リストラされて良かった。当時は辛いことだったけれど、こうして見ると、それも良かった。あのままクリニックにいても、僕は成長しなかっただろうし、この記録を見て違和感を覚えることもなかっただろう。これで良かったのだ。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)