12月11日:ニコの「チェルシー・ガール」

12月11日(日)ニコの「チェルシー・ガール」

 

 それほど忙しくはなかったとは言え、今週はそれなりに仕事もあり、いい週だった。来週辺りから、暇が生じてくる。コンスタントに来てくれているクライアントでも、12月の半ば頃から、予定がつかないとかいうことが生じてくる。下手をすると、来年まで来れないという人も生じる。間を空けたくない人も中にはいるのだが、強制的に間隔を取らされてしまうのが、何とも残念である。だから年末年始は大嫌いなのである。それでも、昨日はいつものようにクライアントが来てくれたし、久しぶりに来てくれたクライアントもいた。僕のことを覚えていてくれて、二か月ぶりに来てくれたのだけど、僕は嬉しく思う。

 世の中、不景気だと言う。確かに世界情勢は不安に満ちているし、経済的にも数字で見る限りでは確かに不景気である。一方で、今は不景気なんだと僕たちが決めつけてしまっている面もあるかもしれない。この辺りは、なんとも区別がつきにくいものであるが。

 不景気で物が売れないのか、二週間ほど前に訪れた中古のCD店では、以前よりも遥かに値段が下がっていた。よほど、売れないのかもしれない。その時に700円で買ったCDを、昨日、パソコンに取り込んでみた。

 取り込みが開始されると、僕はタバコに火を点けた。終わるまで待たなくてはならないからである。それで、そのタバコが吸い終わる頃には、取り込みが既に終わっていたのである。CD一枚取り込むのに、それだけの時間しかかからないのだ。もちろん、そのCDの収録時間などにもよるのだろうとは思うが、これは僕が予想していたよりもはるかに短い時間だった。ここで、CDを返さなかった人たちのことが思い出された。一枚のCDを取り込むのに、タバコ一本よりも短時間で済むのだ。彼らがいかに怠慢だったかと、僕は改めて感じた。

 ちなみに、昨日取り込んだCDはNicoという歌手の「Chelsea Girl」というアルバムだった。「ベルベット・アンダーグラウンド&ニコ」で二曲ほど歌っていた女性のソロアルバムである。ベルベット・アンダーグラウンドのこのアルバムは、僕はあまり好きではなかったのだけど、ニコのボーカルにはすごく惹かれた。どこか陰鬱で、翳りがあるボーカルが魅力的だと感じていた。

 ソロアルバムの方でも、その魅力が活きている。セールス的には成功したとは言えないようなのだけど、それは華やかさに欠けているからだと僕は思う。どうしてもマイナーな印象が勝ってしまうのだろう。でも、ギターにストリングス、フルートという楽器編成が、ニコのボーカルと相俟って、非常にいいムードを醸し出していると僕は思う。個々の曲も、聴き込むほどに魅力的に聞こえてくるし、その音作りも僕は好きである。しかしジャズのレーベルであるVerveからリリースされているということは意外であった。いずれにしろ、売れている物が必ずしも良いとは限らないし、それほど売れていなくても、ものすごくいい作品もあるということである。こういう作品は、買って良かったと僕は思うのである。不景気のお蔭で、安い買い物をしたと思っている。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー

 

 

関連記事

PAGE TOP