11月9日:清貧主義

11月9日(水)清貧主義

 

 不景気なのでどうなのか分からないのだけど、ボーナスが入ったら旅行でもと考えている人もいることだろう。旅行も結構なのだけど、旅行に行くよりもカウンセリングを受ける方が良いと僕は考えている。まあ、これは価値観の問題でもあるので、強制できないのであるが。

 旅行と言えば、僕はあまり旅行をしない。旅行をする時は絶対に独りでないと嫌なのである。例えば、横浜に行った時の話がある。それは神奈川県で研修があって、それに参加したのであるが、実際は三泊四日の研修だったのを、周りには四泊五日の研修だと嘘をついて、一日早く行って、横浜で遊んだのである。もちろん僕の独り旅である。

 当然、新幹線などでは行かない。夜行バスで行くのである。すると早朝の5時前に横浜に到着してしまうのである。そんな時間に着いても行くところもない。仕方がないので山下公園に行く。公園内をウロウロした後、ベンチに座って二時間くらい海を見る。それから散策である。観光地には行かない。普通の住宅街を歩くのである。通勤時間に駅に行き、通勤、通学の様子を見るのである。

 それから文学資料館みたいな所に入り、人形博物館に入る。施設関係はそれだけである。午後は中華街に入り、中華まんを頬張りながら歩く。「これで俺もハマっ子の仲間入りしたぜ」などと思いながら歩くのである。この時のお昼だけは奮発しようと決めていたので、1500円のランチを食べる。別に高額でもないのだけど、お昼でこれだけの額を使うことはないので、僕の中では贅沢なのである。

 それから今晩泊まる所を探す。当然ビジネスホテルである。午後三時頃からチェックインが始まる。その時間ちょうどに入る。入るとまずはシャワーである。それから仮眠を取る。起きると、出歩かず、その日の出来事や体験をノートに書き留める。そうしないと忘れてしまうからである。

 そして、おそらく今ではそれをしないだろうけれど、夜は呑みに歩く。ファーストフードの店で夕食を取り、バーを探す。三軒はしごしてホテルに戻る。それで僕の横浜旅行はお終いである。

 僕の旅行とは大体そんな感じである。観光地を巡るよりも、現地の人の日常の光景を見たいと思うし、当時は美味しい料理よりも酒だった。今ならきっと、酒は飲まず、夜の光景を見に行くだろうと思う。

 要はお金を使う旅行が嫌いなのである。この時は、交通費と宿泊費を別にすれば、昼食代、夕食代、中華まん代、それに二軒の施設の入場料、いくらかの電車代、それだけである。五千円くらいではなかろうか。後、三軒の呑み代と家族への土産物を買った。お金がかかったのはこの部分だけだが、もし、今行くとしたら、この部分の出費はないだろう。

 結局のところ、貧乏旅行ほど愉しいものはないのである。けち臭いとかセコイという訳ではない(半分当たっているけれど)。僕はこれを清貧主義だと勝手に名づけている。お金を使わないけれど、それで十分愉しいのである。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー

 

(再録に際して)

 僕の清貧主義とは、できるだけ高額のお金をけずに、生活を充実したものにするというものだ。主義と言う言葉は、それを信じているとか、それを信条としているといった程度の意味だ。個人を雁字搦めにする鎖のようなものではないものだ。(平成25年11月)

 

 

 

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