10月8日(土):会社の辞め方(5)
かつてのような終身雇用がなくなったので、一生の間に二度や三度転職する人も珍しくないし、むしろそれが当然というような感覚が僕にはある。一つの会社にしがみついていられる人はわずかである。自分の意志で転職するならまだしも、一方的に解雇されたりして、いやが上にも転職せざるを得ないというような人も多い。と言うか、こっちの方が圧倒的に多いだろうと思う。あるいは、会社そのものが倒れてしまうということも珍しくない。倒産は企業にはつきものである。
つまり、会社は一生面倒を見てくれないということであり、今の会社とは一生付き合えるものではないということである。そういう時代は終わったのだ。だから、自分にとって、最後に残るものは何かということを、僕たちは把握しておかなければならないのではないかと思う。
今の仕事は、一生ものではないかもしれない。リストラされるかもしれないし、倒産してしまうかもしれない。仮に残ることができても、定年退職がある。まだまだ人生の途上で定年がやってくるのである。確実に言えることは、大部分の人にとって、今の仕事は一生ものではないということである。僕はそう捉えている。
従って、これからは転職上手な人の方が有利かもしれないと僕は思うのである。今の仕事は、常に、到達点ではなく、通過点として捉える必要があるのではないかと思う。
今の仕事も一生ものではないということであれば、今の仕事において、僕たちは何をするべきだろうか。いずれはその仕事から離れ、僕たちはそれを失うということが決定づけられているのだとしたら、僕たちは自分が携わっている仕事に対して、どのような態度を取るべきだろうか。一人一人が自分なりの解答を見出していけばよいと僕は考えているけれど、僕の個人的な見解では、後で後悔しないように今の仕事をやり遂げることだと思っている。嫌でも、苦しくても、今の仕事からできるだけ多くを学んでおきたいと、僕はそう考えている。
こんな考え方をするようになったのは、三十歳を超えてからだった。辞めてから、あるいは退職してから、もっとあの時こうしておけば良かったとか、いろいろ後悔することも多かったのである。何事も後悔を残したまま離れるというのは、それはそれで苦しいものである。二十代の間はそのような考え方をしてこなかった。常に先のことを追いかけなければいけないと考えていた。それに、二十代の経験がもっと自分のものになっていれば良かったとも思うし、そこからもっと学ぶことができたはずなのにと、今でも僕は思っているのである。できることなら、後悔のない人生を送りたいものである。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)