10月6日(木):会社の辞め方(3)
中には資格を取って、その資格で次のことをやろうと考える人もある。この場合も同じで、退職してから試験勉強を始めると遅いのである。むしろ、退職する時点で資格を既に取得していることが望ましい。
退職することは簡単なのであるが、肝心なのは次のことにどれだけ速やかに取り掛かれるかであると僕は考えている。次のことが遅れてしまうほど、その人にとっては不利なことが生じてくるものである。
会社を辞める時にもう一つ重要なことを今日は述べる。それは敵を作らずして辞めるということである。この先、昔の同僚とどのような縁ができるか分からないのだから、敵は作らない方が望ましいと僕は思う。
大抵の場合、会社を辞めるからというだけで敵になることはまずないだろう。もし、次に始めることが具体的に描けているなら、案外理解してくれる人も多いし、応援してくれる人や味方になってくれる人も現れるだろう。いずれにしろ、早い段階で敵は作らない方がいいのである。
自分が辞めると、残った人たちに迷惑をかけてしまうのではないかと心配される人もある。その気持ちが分からないでもない。自分が辞めたら、自分の分担を誰かが引き継ぐなり担うなりすることになる。同僚に負担を強いてしまうということを危惧するのである。しかし、迷惑というのは人間関係には付き物で、辞めても迷惑になるし、残っていても絶対に同僚に迷惑をかけないとも限らない。それに、会社に所属していても、定年等で退職する時が来るのだから、他の人が担ったり引き継いだりする時期が早いか遅いかの違いである。遅かれ早かれ、いずれはそういう「迷惑」をかけることになるのである。
さて、会社を辞めるからと言って、嫌いな上司にケンカを売って辞めるというようなことは避けたいのである。この上司とこの先、どういう縁ができるか分からないからである。この上司が、次に始めるお店の常連さんになってくれる可能性もあるし、店の宣伝をしてくれる可能性もあるのである。だから誰ともケンカ別れはしない方がいいのである。不利を覚悟でケンカ別れするなら、それはそれでけっこうなことであるが、それで痛手を蒙っても、それは自己責任である。
しかし、僕の見てきた限りでは、その人が現実的に次のことが描けている限り、あまり敵を作ることはなさそうである。
この三日間に述べたことをまとめておくとこうなる。ここでは解雇されたとかいうわけでなく、自ら退職する人を前提としているのであるが、最低でも一年は今の仕事を続けること(それ以上ならもっと望ましい)、退職してから後のことが具体的に絵に描けており、既に動いていること、そして敵は作らずして辞めるということである。僕はこの三点は是非とも遂行して欲しいと思っている。というのは、そういうことを疎かにしてその場の勢いで退職してしまう人も、僕の見てきた限りでは、少なくないからである。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)