10月16日:早めに休もう
今日は家の事情で、どうしても手を貸してくれと頼まれていて、仕事の方は休みにしている。その用事は意外に早く終わって、午前中には終わった。
父の運転する車で帰る途中、河原町五条の辺りで降りる。映画「仁義なき戦い 完結編」で登場する天政会のビル(ロケで使われた)を眺める。宍戸錠さんが殴り込みに出た所を待ち伏せしていた警官隊に取り押さえられた(もちろん映画の中でのお話)あのビルだ。
昔の日本映画は京都でもよく撮影されていて、京都人にはいろいろ馴染のある場所がロケ地に選ばれたりもしていたそうだ。「仁義なき戦い」シリーズでも、映画館は大宮東映(今はなくなったけれど)がロケ地らしい。「完結編」オープニングの行進は堀川通りで撮影されたそうだ。そういう裏話を知って映画を観ると、面白さも増すし、映画を観てからロケの現地に行ってみるのもまた楽しいことだ。「冬のソナタ」のロケ地を巡るツアーにおばさま方がこぞって参加したという話があるけれど、その気持ちが分からないこともないな。
まあ、それはともかく。河原町で下車したのは、書店を巡ってルソーの著作を買おうと思っていたからだ。たくさんの著作があるのだけれど、僕は「告白」から読み始めようと決めていた。ところが、生憎なことに「告白」は今は文庫本では出ていないのだ。昔は岩波文庫から三分冊くらいで出版されていたように記憶しているのだが、絶版になっているようだ。
岩波文庫はラインナップが優秀で、いい作品が揃っている。ただ、すぐに絶版になるのが難点だ。どうしても読みたい本を、古書店でそれなりの値段で購入した後、それが復刻されたということも経験している。ルソーの「告白」も、いつか復刻するのだろうか、それとも復刻を待たずに気長に古書店を巡る方がいいだろうかで悩む。
取り敢えず、この辺りの古書店を回ってみることにした。今日は水曜日なので、休んでいる古書店もあり、日が悪かったと思う。それでも何軒か回ったが、「告白」は見当たらずだった。
結局、目当ての本は入手できなかったが、妥協して「人間不平等起源論」を買う。読み始める。最後まで読めていないけれど、なかなかいい作品だなと感じている。面白い。いつか、ここでも書いてみよう。
その後、しばらくウロウロする。昨日も歩いた場所なので、新鮮さは感じられない。そのまま帰宅してもよかったのだけれど、夕方、高槻に出る。パソコンをいじり、書き物なんかもする。なんとなく、これで今日一日を終えることが惜しく感じられてきたのだ。それで、何かをして、少しでも前に進もうと思ったのだ。
思うようには作業ができなかった。集中を欠く。心の中が騒がしい。落ち着かず、気持ちばかりが先走っている。こんな日は早めに休んだ方がいいのかもしれないな。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)