10月13日(日):島根にて(1)
島根での二日目。
僕の方はというと、昨夜はあまり眠れず、朝から具合が悪い。体が熱っぽく、腹具合がよくなかった。熱っぽいのはなんとかなるけれど、腹具合だけは心配でしょうがなかった。朝から何度もトイレに駆け込む始末だが、外に出てしまうとトイレがない、それが心配の種だった。
朝食を済ませ、母を迎えに行く。同窓会のため、母だけは別に泊まったのだ。ところが僕たちの出発が早すぎた。母は昨夜、朝の9時過ぎに迎えにきてほしいと父にメールを入れていたのだけど、父がそれを見ていなかったせいである。そうして、父と僕とは1時間ほど時間を潰さなければならなくなった。
僕たちは、まず、ウチの山を見に行った。山への道路がえらくきれいに整備されている。道幅を広げ、ガードを設置している。こんなところ、なんのためにそれをするのか意味不明である。でも、なにかの目的があってそうしているのだろうから、この辺りが開けてくる可能性は十分にある。そうなるとウチの山も売れる可能性がでてきたように感じる。
それから親戚の家を訪問して、母を迎えに行く。
旅館の前で母は待機していた。同級生の人二人と談笑していた。その二人とも、母と同じ年齢だから、けっこうな高齢である。その後、車中で母が言っていたな、自分だけが年を食ってるのかと思っていた、と。そういうものかもしれない。同級生も同じように年を食ってるはずなんだけど、会っていないと同級生の情報は更新されないんだから。記憶にある同級生は昔のままの姿だ。
その後、その旅館のすぐ近くの野菜販売店で両親は買い物をする。地元の農家さんが納めた青果が並んでいる。そこに手書きのポップがついてるのだけれど、これがなかなか面白い。ついついあれこれと読んでしまう。なかなかユニークなお店だと思った。
それから僕たちは「秦記念館」へと向かう。父がどうしても見ておきたいと言うからだが、到着するとまだ開いていない。中から人が出てきて、会館前だけれど、入館を認めてくれた。二間続きの一室だけの記念館だ。秦佐八郎の生い立ちから没年までの写真や作品、記録などが陳列されている。
秦佐八郎は梅毒の治療薬であるサルバルタンを開発した人だそうだ。梅毒というのはスピロヘータという、これは寄生虫になるのかな、によって発症する病気だ。軟骨がやられるので、関節が使えなくなったり、鼻が欠け落ちたりするという怖い病気だ。おまけに脳までやられてしまうとう怖い病気である。確かシューベルトはそれで亡くなったのではなかったかな。そういう病気の治療薬を完成させたわけだ。その後、ペニシリンが開発されて、サルバルタンは使用されなくなる。
秦は、新1000円札の北里柴三郎の北里研究所にも身を置いた人である。記念館に設置されてある年表を見ると、北里の下で働いたのは、秦がサルバルタンを開発してから後のことであるようだ。だから北里の弟子とかいう立場ではなかったようだ。
そんな偉い人がこんな田舎から生まれたんだな。
秦記念館を後にする。これで今回の目的の一つは達成した。次の目的、墓参りに僕たちは向かう。以前は草刈りをしたけれど、今回は無しのようだ。お参りだけ済ませる。
再び親戚の家へ。今度は母を連れていく形になった。母たちはお喋りをする。父は急かす。女のお喋りはある程度までは容認しないと、とは僕も思うのだが、際限が無いという父の言い分にも一理ある。
次に向かうは某レストランだ。海岸沿いに建ってるレストランで、海を見ながら海鮮丼を食べるという母のリクエストを叶えるためだ。
腹具合が悪い。何度も危ない場面があった。ここでやっとトイレに行く。頭がボーっとなってたせいか、トイレを間違えてしまう。間違えるといっても、障害者用の広い個室を使ってしまったというだけなんだけど。トイレの表示はされてるのに、トイレが分からなかったということだ。
僕も海鮮丼定食をいただく。何種類もの魚介類のお造りが盛ってあって、それなりに良かった。いささか食べにくいという感じもあったけど、少々のことは目をつぶろう。それにしても、この定食が2000円だって。贅沢してしまったな。
食後、僕は外に出て海岸線を歩く。海は穏やかで、空は真っ青だ。きれいな景色だった。こんなに天気が良くてラッキーだ。ただ、少々暑いが。
母たちはなにか買い物をしてたようだ。それから母たちもしばらく海を眺める。
次に僕たちが向かったのはデパートだ。「ゆめタウン」にて買い物をする。僕の方は何も買うものはなかった。母が土産物を買う。兄たちへの、職場への、そして自分たちの土産物を買う。
僕は店内をうろつく。ここで再びトイレに駆け込む。
母を見かける。すでに兄たちの分は買ってあった。母は海産物のが欲しいという。海産物コーナーがあるのだけれど、あまり大したものがない。今年は猛暑のせいで漁獲量が減ったためであろう。昆布やワカメはかなりの不漁だったそうで、それ系の品物が全然見当たらない。地球温暖化の影響が目に見えている。
僕は外にでて、喫煙スペースで一服。ライターがなかなかつかない。こんちくしょう、とばかりに、なんども着火を試みる。ようやく火がついた。ホッとして一服。見ると、見ず知らずの人が僕の方にライターを差し出していた。なかなか火がつかないのを見て、親切にも、ライターを貸してあげようとされたのだ。僕はお礼だけ言った。相手の方も不愉快な感じはなかったと思う。
いかんいかん、視野が狭くなってるぞ、自我狭窄でも起こしているのか、それとも単に自分のことしか見えていなのか、反省しよう。
以上で今日のというか、今回の目的はすべてこなしたことになる。時間は13時ころ。まだ旅館に戻るには早い。次はどこへ行こうかと相談し合うことになった。
さて、今日のブログは長文になってしまいそうだ。ここで次項へ引き継ごう。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)