1月4日(水):タバコの思い出
昨日(3日)の夜から禁煙に挑戦している。まあ、タバコを吸うことは何も法律違反をしているわけではないのだけど、何となく、喫い続けることにも疲労感を最近は覚えている。どこまで続くか分からないけれど、今日の夕方くらいまで我慢していようとは思う。
僕が喫煙し始めたのは、実は割と遅いのである。いや、最初の一本こそ大学生の頃だったけれど、それ以後は吸わずにきたのである。大学生の頃、生まれて初めて吸ってみて、頭がすごくクラクラして倒れそうになった。そして、こんなものみんなよく吸っているな、などと思ったものである。
定期的に吸うようになったのは、僕がクリニックに勤めていた頃だ。だから僕が25~26歳頃だ。当時、先生(クリニック長)と月に1回くらいの割で、一緒に呑みに行っていた。ある時、先生が「寺戸君、タバコ吸おうか」と持ちかけてきた。二人ともタバコは吸わない人間だったのだけど、「先生が喫うのでしたら、お供します」とばかりに、タバコを買って、呑み屋に入ったのである。その時、不思議と喫えたのである。以前の記憶があったので、あまり深く吸い込まずに、吹かすような喫い方を始めの頃はしていたのを僕は覚えている。
それから何度かその先生と呑みに行く時に、タバコを吸ったような記憶がある。このタバコというものは、呑む席では非常に便利なのである。僕はタバコを吸わなかったので、呑みに行くと、本当に呑むだけになってしまうのである。呑みっぱなしの状態になるのである。タバコは、飲酒に少しインターバルを設けてくれる。だから、独りで呑む時にも、僕はタバコを持ち歩くようになった。
それでも最初の頃は、普段の生活では吸わなくて、呑みに行く時だけに限定されていた。本数が一気に増えるのは、クリニックを辞めて、アルバイトで食いつないだ時期である。この時、僕は朝も夜も関係なく働いたのである。特に深夜勤務はきつかったのである。タバコは睡魔を除いてくれるということを発見して、夜間を中心にしてタバコの本数が増えていった。それから癖になっていったのである。
でも、タバコと言うと、僕は先生と飲み歩いたあの情景を一番に思い出すのである。ある時、先生の行きつけの呑み屋に僕を連れて行ってくれた。店の人は、当然僕のことを先生に尋ねる。その時、先生は、「こちらは寺戸君。私の跡継ぎにしようと思っている」と、僕のことを紹介してくれたのである。
その後、先生とは見解が合わなくて、僕が反発するようになり、結局、僕は辞めたのだけど、「跡継ぎにしようと思っている」とまで言ってくれた人は、その先生だけだった。後にも先にも、僕のことをそこまで高く買ってくれる人は現れないだろうと思う。それが先生の本心だったのか、酔って言ったことなのか、今では分からない。でも、僕自身は、その時の先生の言葉をとても誇りに思っている。
こうして振り返ると、その時のもので残っているのはタバコだけである。酒も呑まなくなった。当時、先生と通った店も、大部分はなくなっている。そうか、タバコはその時の思い出とつながっているのかもしれない。どこかで僕はその時の体験を失いたくないと感
じているように思う。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)