1月26日:キネマ館~今月観た映画より

1月26日(土):キネマ館~今月観た映画より

 

 今月もたくさんの映画を鑑賞した。やはり昔の映画はいい。今月の収獲は「魚が出てきた日」「禁じられた抱擁」「将軍たちの夜」だ。その他の作品もなかなかいいと思ったものもあれば、時間つぶし的に観た映画もある。いいと思ったものだけを記録に残しておこうと思ったのだけど、一応、観た映画のことはすべて残しておこう。

 

 昨年の「ゴジラ対ガイガン」以来、特撮怪獣ものも観ている。今月は「宇宙怪獣ドゴラ」と「モスラ対ゴジラ」の二作を見た。

 

『宇宙怪獣ドゴラ』

 ドゴラの方は、他の怪獣が登場しない単体ものだ。形のない怪獣を造形しようとして、本当に苦心惨憺された様子が伺われる。ドラマの部分もしっかりしていて、宝石や貴金属を狙う泥棒一味と、それを追う刑事、敵か味方かはっきりしない外国人がそれに絡むといった、刑事ドラマ風の展開を見せる。そこに怪獣が割り込んでくるのだから、なかなか豪華な内容である。

 ドゴラが触手を伸ばし、橋を釣り上げて破壊するなんてシーンは、本当によくできている。これを手作りでやるのだから、相当な根気を要しただろうなと思う。こういう職人技を子供時代に目にすることができた子供の方が幸せであったかもしれない。

 

『モスラ対ゴジラ』

「モスラ対ゴジラ」の方は、相変わらず見事な特撮であることに感心する。大嵐のために海岸に漂着した卵を巡って、それで金儲けをたくらむ起業家たちの暗躍と、卵を帰してほしいと望む小美人たちとの対立を軸に、ゴジラが現れ、町を破壊する、人々はモスラに救いを求めるが、モスラはすでの老齢の域にあり、決闘の末、力尽きる。その卵から二匹の幼虫が誕生する。この誕生シーンがよくできている。ホント、手間暇かけて作ったという感じが伝わってくる。

 それにしても小美人の二人を登場させるセンスが素晴らしい。これをザ・ピーナッツの二人が演じているのだけど、二人のセリフがピッタリ一致するところも素晴らしい。

 

『シャークプリズン』

 ホラー映画は苦手だけど、ちょっぴり怖いやつも見たい。そこで僕が選んだのは、いわゆるモンスターパニック系の作品で、中でも「サメ系」の映画に今は凝っている。今月、サメ系で観たのは「シャーク・プリズン」という映画だ。

 爆破解体によって古代のサメが復活したという設定だ。このサメは水中だけでなく、地中をも泳ぐことができるという。

 アメリカのアーカンソーでは、女囚たちが屋外作業に出向いている。女囚のくせにボディラインがくっきり出る服装をしているのは製作者側のサービスとしておこう。多少、お色気もないとこういう映画は見どころがなくなる。

 この作業中に一人がサメに襲われる。彼らは刑務所に戻るが、道中、女囚の一人の友人によって、刑務所職員を人質にして脱走する。彼らは一軒の家に身を隠す。この家にサメが集まってきて、彼らはそこから脱出することを決する。ストーリーはこの脱出劇を軸にしており、サメと戦ったり退治する過程は描かれていない。

 一方、盗難車の事件ならびに惨殺死体の事件を追う刑事たちが登場する。女刑事と部下の若手男刑事のコンビである。部下の男性刑事をチクチクいじめるサドっ気のあるこの女刑事を、往年のセクシー女優であるトレイシー・ローズが扮する。熟女になっても衰えぬ美貌と、歩くとゆさゆさ揺れるでっかいボインがご健在なのはなによりである。

 この映画、もう一度観たいかと尋ねられたら、いや、一回で十分だと答える。サメはすべてCG。登場人物たちに感情移入できない上に、特に緊迫感のない映像が続くという印象を持った。製作した人たちには申し訳ないが、あまり面白いとは思わなかった。

 ちなみに、サメ映画と女囚脱獄映画の2ジャンルを抱き合わせるといった発想はまずB級である。間違いなくB級であり、B級っぽさがプンプンする作品だ。そういうB級感を味わいたい人にはお勧めできるかもしれない。

 彼らの隠れ家から大量の銃器が発見されるなどのご都合主義もさることながら、ディケンズの「二都物語」(劇中、女囚の一人が家の書架から発見する)は何の伏線でもなかったという、そういうお粗末さも(別の意味で)味わい深い。アーカンソーがサメに占領されてシャーカンソー(’Shark’ansas)になるという、オヤジギャグ的結末も、何ともいいようのない脱力感をもたらしてくれる。こういうB級テイストは評価しよう。

 

 

『特攻大作戦』

 戦争映画だ。昔、子供の頃に録画して繰り返し観た記憶がある。面白い映画ではある。

 主人公はリー・マーヴィン。彼の任務は12人の囚人を軍人に鍛え上げ、特殊任務を遂行するというものだ。この12人の囚人に、チャールズ・ブロンソン、ドナルド・サザーランド、テリー・サヴァラス、ジョン・カサヴェテスらが扮する。上層部側にはアーネスト・ボーグナイン、ジョージ・ケネディ、ロバート・ライアンらが扮する。なかなか豪華なキャスティングである。

 物語は三部に分けることができる。まず、囚人たちを軍人に鍛え上げる過程、続いて彼らの実力を見せる模擬訓練の過程、最後に作戦実行の過程である。中間部はなくてもよかったのではないかと思うのであるが、上層部の人たちの出番のために挿入されたエピソードのようにも感じられる。

 軍人に鍛え上げる過程で、僕が興味深く観たのは、心理学者が言語連想テストを実施する場面だ。ブロンソン演じる囚人が被験者である。彼は反応の固着を見せる。あれだけ固着してしまうと、作戦遂行に支障が出るだろうと思われるほどだ。つまり、作戦の第1段階から第2段階へと移行していくことが困難になるだろう。でも、さすがに映画である。そんな困難はこれっぽちも現れない。ちなみに、この被験者が、ブロンソンではなく、サヴァラスだったらもっと頷けただろうにと思う。

 彼らの訓練は、基本的には団結することに重点が置かれている。自分勝手な囚人たちが、ボスや規律に反抗しながらも、団結していく過程が特に描かれている。

 彼らの任務とは何か。敵国のドイツに行って、将軍たちがバカンスを過ごす屋敷を破壊するというものだ。上層部を混乱させることで敵国の組織構造を揺るがし、Dデイの上陸作戦に備えるということである。なんともお粗末な任務という気がしないでもない。

 歴史に名を残すような作戦に先立って、無名の者たちによる無名の作戦が遂行されていたという設定であり、それを囚人たちがやってのけるというところに魅力があるはずなんだけど、それがどうもしっくりこない。どうもこの作戦が回りくどく感じられるのだ。わざわざドイツ軍に扮して屋敷内に侵入しなくても、ドイツ将校たちを地下に閉じ込めなくても、一気に攻撃をすればいいのにと思ってしまう。まあ、それだと映画が面白くならないか。

 作戦は、危機やトラブルに見舞われ、なかなかスリル満点ではある。最後にあんな重装甲車でよく逃げおおせたなと思うのだけど、細かいところは無視しよう。

 なんとなく難点ばかり書き立てているように見えるかもしれないけど、個々の俳優たちは魅力的である。また、一つ一つのエピソードが小気味よく展開し、すっきりした編集がなされているようにも感じる。十分に楽しめる映画ではあるように思う。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

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