1月19日(金):臨床と生活におけるパンセ集(7)
(7A)「好き」と「嫌い」
子供でも好きと嫌いの感情を経験する。ただ、大人の言うそれらよりも広い意味を含む。
子供の「好き」の中には、「尊敬できる」「ウマが合う」「優しくしてくれる」など多くの意味を含む。同じく、「嫌い」にも「尊敬できない」「ウマが合わない」「冷たい」などを含み、「憎い」などの感情も含んでいるかもしれない。それぞれの感情(体験)が分化していないためである。
感情が分化していくと、「あいつは尊敬できるけど、ウマが合わない」とか、「人間としては尊敬できるけど、好きになれない、でも憎いわけでもない」といった体験ができるようになる。そうして分化した方が、他者に対して柔軟に応じることができるものだ。
(7B)頑固さ
精神的に病んでいくと、人は頑固になる。この頑固さは信念を貫徹するといったものではなく、外界のものを一切合財拒絶するという形を取る。外からの刺激が耐えられないほどの動揺をもたらしてしまうがために、一切を拒絶するという形で身を守らなければならなくなるからだ。
柔軟性を欠くが故に、そして、一切の変化を受け入れることができないが故に、この人たちは「治り」が悪くなる。
(7C)考え方を変えること
考え方を変えたのに上手く行かないとある人は嘆く。当たり前である。今まで右向いていたのを左向いただけなのだ。立ち位置はそのままなのだ。
変えるとは動くことである。新たな歩を踏み出すことに他ならないのだ。
(7D)ありのままの私
私を導くのはありのままの私ではない。かくあろうとする私が私を導くのだ。
私を形成するのは、ありのままの私ではなく、今の私を超越した私なのだ。
肯定されるのは超越した私の方である。今のありのままの私はいずれ否定されなければならない私である。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)