6月11日(金):カスのカスによるカスのための五輪
先日、党首討論があった。僕は興味がなかったのだけれど、今日、ニュースでその一部を映像で見た限り、案の定という感じがした。予想通り、コンニャク問答をやってるだけという感じだった。もっとも、一部分だけ見て判断するわけにもいかないし、全体を見てから全体の評価をすべきであることは重々承知しているので、僕はこれに関してモノを言う権利もないのだ。
印象では、コロナのことよりも五輪のことばかりという感じがしている。「安全安心」「国民の命を守る」「感染対策をしっかりする」など、繰り返し聞かされた文言をまた聞くだけだ。autismじゃないかと僕は疑っている。
分裂病(と僕は疑っている)のカス首相はさておき、五輪は賛成派が増えているという。それはそうだ。スポンサー企業にとっては開催されてほしいだろうし、損失を生み出したくないし、できれば利益を上げたいと思うものだろう。政府もそうだ。
反対派を押さえて賛成派を伸ばそうと思えばいくつかの方法がある。例えば、アンケートの質問を変えるだけで達成できる。五輪の開催に賛成、延期、中止という三択を、賛成と中止の二択にするだけで賛成派が上回ることになる。延期派は基本的には開催に賛成なのであるから、選択肢を少なくすれば賛成派の数が増えることになる。
また、開催賛成の声ばかりを報道すれば、人の意見は変わりうるのである。大衆を煽動する一つの方法だ。ある一つの意見だけを繰り返し提示して、人々をその意見に馴染ませるわけだ。その意見を自我親和的なものにしてしまうわけだ。
ああいうデータをどこまで信用していいか疑問である。僕はそのままを信じない。中には五輪反対派から賛成派に寝返った人もあるだろうけれど、その場合でも、積極的に開催を賛成しているとは限らず、もはや諦めとして賛成派に回ったという人もあるだろうと思っている。反対するのが無意味だから、賛成にしておこうという感じの人たちである。
ああ、そうだ、カス首相が1964年の東京オリンピックの個人的感想を述べていたな。東洋の魔女の活躍に感動したとかナントカ。その感動を今の若い人にもしてもらいたいとかナントカ、そういうことを言っていたな。
僕は思う。当時、東京オリンピックをリアルタイムで見ていた人たちは、確かに感動しただろうけれど、それは純粋にオリンピックに感動していたとは言えないかもしれない。終戦後の焼野原からの復興、敗戦の惨めな状況からの脱却、もはや敗戦国ではないという自覚、世界に通用する一国であるという確信、それらに関する感情の方が大きかったのではないかと、確かな根拠があるわけではないけれど、僕は個人的にそう思っている。競技そのものに感動した人よりももっと多いはずであると思っている。
時代が違うのである。成長あるいは復活途上にある大会と、衰退途上にある大会とでは、まったく意味が違うのである。2020年のオリンピックからは悲劇しか予想できない。
五輪のために急ピッチで進めているのがワクチン接種である。大規模接種センターの予約はガラガラであるという。僕はそれが悪いとは思わない。最初は予約が埋まっても、接種者の数が増えていけば空きが生まれるはずであるからだ。問題は、空きが生じた時にどうするかという第二案、第三案を用意していたかということである。空きが目立ち始めたら即座に第二案を採用すればいいと思うのだが、どうもそういう感じではないような気もしている。
確かに矛盾はある。人流を抑制しなければならないのに、大規模接種センターはむしろ人流を促進してしまう。少々のリスクを冒してでも接種完了を優先させるという見解であるなら、それをきちんと表明しなければならない。その上で、不安に思う人はかかりつけ医などで接種してくださいと言えばいいのである。そういうことを言わないからあちこちから不評が出てくるのだ。
それにしても、8割埋まって2割空きがあるっていうのならまだしも、2割埋まって8割空きがあるということなのだから、第二案がいかに遅れているかを思わせる。そんな調子なら予約なしで受けに行っても差し支えないのではないかと思えてくる。どっちみち8割もの空きがあるのだから、先着順で受け付けますとしてもいいのだ。予約の人を優先しますという条件をつけてもいいので、あとは希望者を先着順で接種しますとしていいのではないかと思うのだ。それでも10割は埋まらないかもしれない。
大規模接種センターは失敗に終わる。移動式接種センターならまだ良かったかもしれない。せめて接種センターを市とか区の単位で設置してほしいところである。予約が埋まらないのは、予約方法が難しいだけでなく、利便性が悪すぎるのだ。
一日100万人接種して、一億人に打つとなれば100日かかるわけだ。一人二回接種だからその倍の200日かかるわけだ。7か月くらいか。それでも週7日で打ち続けた場合の話である。10月か11月頃には国民の全員が接種を終えていると首相は言うのだけれど、あまりにも甘い認識である。
ワクチン接種の進んでいるアメリカは一日に200万人ペースである。役所でも、スーパーマーケットでも接種するそうだ。要するに、人々の生活圏内で接種を進めているということなんだけれど、日本は生活圏外での接種を進めているのだから、当然無理がある上に、追いつけるはずがないのである。
こんなことを書いているのもバカバカしくなってきた。安心・安全の五輪にするなどと政府は言っているけれど、それは要するに、まだ我々の結果は出ていないという認識なのだろう。僕から見れば、もうすでに結果は出ている。感染対策はあきらかに失敗しているのだ。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)