6月4日:キネマ館~『スリザー』

6月4日(金):キネマ館~『スリザー』

 

 この映画、以前観たことがあるようなないような。どうも記憶が曖昧だ。映画の一本観たかどうかなんて大したことではないんだけれど、僕の中で曖昧なものを残さないようにしたいとも思うので、曖昧な疑問に決着をつけることにした。確かに見たということにしようと思い、見ることにした。

 結果、いくつかのシーンでは見覚えがあったので、やはり過去に観ていたのだ。印象に残っていないのはなぜだろう。今回見直してみて、本作がけっこうな「男めし」映画なのだと改めて気づいた。そのせいで印象が薄いのだと分かった。

 

 「男めし」映画とは何か。これは僕が勝手に命名しているだけだ。定食や弁当で「男めし」系のメニューがある。大盛りご飯に、焼肉だの、ハンバーグだの、唐揚げだの、とんかつだの、コロッケだの、たくさんのおかずがついてくるようなものだ。どの一つとってもメインのおかずになるものばかりなのに、それがたくさんついてきて、ボリュームだけあって、結局、何がメインのおかずか分からんという、そういう映画のことだ。

 

 本作は、基本的には宇宙生命体と戦うというプロットのはずなのに、モンスターとも戦いゾンビとも戦うという何でもありの展開になっている。エイリアンも、モンスターも、ゾンビも、それだけでメインのプロットになるものばかりだが、それを一緒くたにしたおかげで何がメインか分からなくなっている。結局、「グラントを倒す映画」と、僕の中では落ち着いている。

 隕石に付着して地球にやってきた生命体は、最初、グラントに寄生する。グラントは人が変わり、相貌にも変化が生まれる。脳は生命体に寄生されているので、彼は生命体に操られるようになる。グラントは愛人に身ごもらせ、この愛人から無数のスリザーが飛び出し、町の人々に寄生しはじめる。

 危うくその難を逃れた女性から、スリザーは親分の記憶を分かち持っていることが分かり、それなら親玉であるグラントを倒せばスリザーも、スリザーに寄生されたゾンビたちも全滅するはずだということになり、見る影もないほど変わり果てたグラントを倒して一件落着となる。いささか御都合主義的な部分もないこともない。

 スリザーは基本的にはすべてCGだ。この映画の公開当時はこういうCGには目新しさもあったかもしれないが、現在の僕にはいささか見飽きた感のある映像だ。

 モンスター化するグラントは、だんだん巨大化していくのであれば、遠方から攻撃しても倒せるのではないかと思える。なんとなくだけど、あんな至近戦をしなくても、もっと巨大化するまで待って、隣の州からミサイルでも打ち込んだらどうかと言いたくなる。

 グラントと妻の夫婦愛が一本の軸になるはずが、どうも弱い感じがしてならない。グラントにも妻にも、どうも感情移入できない。また、この妻である女性と警察官との過去のロマンスもどうも感情を掻き立てない。

 感情移入できないと言えば、他の登場人物も同様だ。あまり魅力を覚えるような人がいない。市長は少しユーモラスなところもあるけれど、喋りすぎだ。

 ハラハラする場面もあるとは言え、特に何も残らない作品だ。だから、言うこともほとんどない。あくまでも僕の個人的感想である。こういう作品を楽しめる人にはいいのだろけれど、僕の好みには合わないな。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

関連記事

PAGE TOP