2月21日:多様は自己を強要する

2月21日(日):多様は自己を強要する

 

 今回のコロナで僕たちの生活に大きな変化がもたらされた。その一つがテレワークの導入だ。コロナが収束してもテレワークは継続されるのではないかと思う。テレワークにはもちろん望ましい一面もあるけれど、一方で問題点もあると思うが、それは別の機会に述べよう。

 テレワーク、要するに在宅勤務ということになるのだけれど、これがなかなか上手くできないという人も少なくないようだ。クライアントからもそういう話を聞く。どうも自宅だと仕事に集中できないなどと彼らは訴える。

 テレワークをやっていくためには三つの要素が必要であると僕は考えるようになった。以下、その三要素を述べるのだけれど、それらは相互に密接にかかわり合っているものである。

 

 一つ目は環境である。仕事をする環境である。さらには仕事に必要な備品などを整備することである。オフィスにあるものと同じものが自宅の仕事部屋に揃っていなくてはならない。こういうのは物的要素であるが、心的要素も含む。オフィスで使用していうのと異なった道具を使っていると違和感をそこで覚えてしまうかもしれない。

 

 二つ目は習慣である。これまで職場は仕事をする場で自宅はくつろぐ場であった習慣が大きく変わることになる。自宅の中で仕事をする場とくつろぐ場とが分けられることになる。新たな習慣を身に着けていくことが求められてしまうのであるが、習慣の変化は心や意識の変化を伴うものである。

 

 三つ目は仕事のスタイルである。できるだけオフィスと同じような環境を整えようとしても、そこにはどうしても限界がある。そこで仕事のスタイルが求められると僕は思う。オフィスでの仕事の仕方と自宅での仕事の仕方とは、その方法ややり方を変えるというだけでなく、働き方とかスタイルも変えていかなければならないと思うのだ。

 テレワークで困難に遭遇しているクライアントたちの多くはこれができていないという印象を僕は受けている。彼らはオフィスにいる時と同じように仕事をしようとする。毎朝、出勤時間になると家を出て外を歩き、始業時間に合わせて仕事を開始する。昼休みもオフィスのスケジュールに合わせる。就業時間もオフィスワークに合せる。彼らはそういうことは一生懸命するのである。

 在宅で仕事する時もオフィスワークのスタイルをそこに持ち込んでいるわけだ。スケジュールの組み方、仕事の仕方、その他諸々のこともオフィスワークに倣うのだ。しかし、自宅が完全にオフィスを模倣できない以上、そこは自分の働き方やスタイルを変えていかなければならない、もしくは新しいスタイルを形成していかなければならないと僕は思う次第である。

 ただ、これは非常に難しい。というのは、オフィスワークでは自然に身についたスタイルであっても、在宅勤務では自ら意図的かつ主体的に自分のスタイルを確立していかなければならないからである。

 

 働き方にしろ、生き方にしろ、在り方にしろ、多様性が認められるのはよいことである。しかし、多様性が認められるほど、しっかりした自己が必要となる。環境や伝統がそのために与してくれていた部分も自分でやらなければならなくなるのだ。多様は自己を強要するのである。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

関連記事

PAGE TOP