10月29日:ポール死亡説 

10月29日(月)ポール死亡説 

 

 今日は朝からバタバタと忙しく動き回っていたけど、夕方のお昼休みにビートルズを聴こうと思って、ユーチューブを開いた。そこでポール死亡説に関するけったいなドキュメンタリーを見てしまい、思わず最後まで見てしまった。とても下らなくて、下らなすぎて面白い。僕は全然信用していないけれどね。 

 もし、ビートルズ学科があれば、僕はポール死亡説を学位論文のテーマに選びたいね。あれは不思議な現象だって思う。 

 ビートルズは1962年にデビューして、1970年に解散している。ポール死亡説というのは68年頃に言われ始めたものだ。「アビーロード」のジャケット、「サージェント・ペパー」の裏ジャケ、その他「マジカル・ミステリー・ツアー」のセイウチマスクや、「レボリューション9」のセリフなどがその根拠として有名である。 

 死亡説というのは、ある意味ではその人の死を願望していることでもある。それになぜポール・マッカートニーだったのかということも疑問である。そして、この死亡説はそれ以前のビートルズの出来事と無関係だとは、僕は思わない。 

 ビートルズの4人はみな労働者階級の出である。それが音楽でスターになり、女王から勲章を貰うまで成り上がっていくわけだ。そしてジョン・レノンのキリスト発言があり、66年には一切のコンサート活動をしないと宣言するわけだ。67年にはアップルレコード社を設立して、資本階級の人間になっていくわけだ。こうした一連の出来事と「ポール死亡説」がはたして無関係だと言えるだろうか。 

 ファン心理の中には、相手を好きだという感情と同じくらい、相手に妬みや憤りがあるものではないだろうか。「ポール死亡説」はそうした負の感情の爆発だったんじゃないかって、僕は思うのだが、いかがなものだろう。 

 しかし、今日見たドキュメンタリーは実にこじつけが多いと感じた。例えば、「アビーロード」のジャケットで、ポールが右手でタバコを持っている。ポールは左利きなのにおかしい、別人ではないかと言われても、左利きの人が常に左手にタバコを持つとは限らないものだ。吸う時には左手で持つが、それ以外では案外右手で持っている場面もよくあるものだ。何かを持ったり書いたりすることもあるので、利き手を空けておくということをするものだ。僕自身そうしていることが多いから分かるのだ。 

 特に多いのが、曲を逆再生したらこう聞こえるというものだ。そして歌詞なんかをアナグラムしたり、ジャケット等を鏡像融合(つまり左右または上下を鏡で映したように対峙させて、それを合わせていくと文字なり暗号なりが浮かび上がるという類のものだ。どう表現していいか分からないので、こんな言葉を使用している)させたりといったものが、これに続く。どれもこれもいい加減なこじつけだ。 

 なぜそれらがこじつけかと言うと、整合性や一貫性がなければ暗号は意味をなさないからである。もし、ある曲のある部分を逆再生して「ポールは死んだ」と聞こえ、それが一つの暗号として意義あるものにしようとすれば、他の曲でも逆再生して同じ「ポールは死んだ」という言葉が聴かれなくてはならないのだ。他の曲では「三人になった」とか「彼は埋められた」とか聞こえているようであれば、それは暗号としては不確定すぎるように思われる。ただ、そう聞こえるというだけのことで、偶然に生じたものでしかないわけだ。 

 ああ、こんなことを解説している自分に嫌気がさしている。書いていても下らないと思えてしまう。しかし、いまだに「ポール死亡説」が生きているとは驚きだ。そして、それを検証しようと非科学的な努力をしている暇な人たちがいるというのも驚きだ。 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

 

 

 

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