<T024-11>高槻カウンセリングセンター便り集(11)
<本ページの内容>
・高槻カウンセリングセンター便り~31通目:ご自由に
・高槻カウンセリングセンター便り~32通目:心理学ショック
・高槻カウンセリングセンター便り~33通目:心理学ショック(続)
・終わりに
<高槻カウンセリングセンター便り~31通目:ご自由に>
グーグルさんから削除要請がきて、昨晩、削除しましたというメールをいただきました。今朝、見てみると、28通目と29通目が削除されていたようです。そのうち30通目も削除されるだろうと思います。
もともとこのページはグーグルさんが運営しているのだから、グーグルさんが判断して削除するのは構わないのであります。私はグーグルさんのページをお借りしている立場なので、グーグルさんのすることに異議申し立てする権利を有さないものと私は心得ております。
また、28通目以前のものを私は見ていないのだけれど、以前のものでも削除されているものがあるかもしれません。私は私で書いていくので、グーグルさんが判断して削除するのはご自由にどうぞであります。
しかし、これだけは押さえておきたいと思う。
心の問題とか、心の病とかいったテーマは、多くの人が耳をふさぎたがるものであります。そのことは心の問題等に関する人々の態度を見るとよくわかるのでありますが、自分に無関係であるかのように振舞うか、傍観者の立場に立つか、激しく攻撃するなど、そういうことをする人が多いように私は実感しています。
私はその人たちを批判するつもりはありません。その気持ちもわかるからであります。心の問題等に踏み込むと、人間の汚い部分をイヤというほど目にしてしまうのであります。自分から遠ざけたくなる気持ちが生まれるのは当然であります。
従って、簡潔に述べると、このテーマ自体に人を不愉快にさせてしまうものが含まれているので、それに関して何か書くと必ず不愉快に思う人が現れるであろうということであります。
だから、これは人を不愉快にするという判断をされれば、遠慮なく削除していただいて結構であります。私にはそこが分からないので、それをしてくれる方が却ってありがたいとも思います。
さて、私自身はこのサイトで特に集客を目指しているわけでもありません。
最初の3か月くらいは何もしていなかったのでありますが、このサイトにも閲覧者がおられるので、その人たちに何か読み物でも提供しようという気持ちで書き始めたものであります。
カウンセリングにはさまざまな話が持ち込まれるのだなとか、いろんな人がいるのだなとか、カウンセラーとはあれこれ考えるものなのだなとか、そうしたことが読み手に伝われば私としては十分であります。
次回は「心理学ショック」(と私が勝手に命名している)について書こうと思います。心理学の本などを読んでいて、衝撃を受けるという体験をすることがあります。私にも経験があります。今日の話と関連するので、次回はそれについて述べようと思います。
(2022.7.25)
(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)
<高槻カウンセリングセンター便り~32通目:心理学ショック>
心理学の本などを読んでると、あたかも自分のことを指摘されたかのような体験をすることがある。自分の内面をズバリ言い当てられたかのような体験を不意にすることもある。そこで体験されていることはショック(衝撃)であると思う。そこで僕はこういう体験をを「心理学ショック」と呼ぶことにしている。
心理学に限らず、さまざまな文献や評論などを読むときも同じである。ショックを受けることがある。ただ、心理学でそれが起きることが特に多いのではないかと僕は思っている。
人はどのようにこのショックを体験しているのだろうか。他の人のことは分からないのだけれど、例えば、本当は衝撃を受けているのに、大したことを言ってないとか、言ってることは分かるなどと言って片付けたりとか、あるいはこれは自分には当てはまらないとかそういう人もいるんだくらいで処理するかもしれない。
これは、要するに、価値下げ、合理化、否認などの防衛機制を働かせて衝撃を和らげているのである。こういう防衛機制が働くというのは、自我が機能していることになるので、決して悪いことではないと僕は思う。
しかし、こうした防衛機制が働かない場合もある。それは読み手の自我が弱っていることもあるだろうし、書いてある内容がその人の防衛機制を突破して自我領域に入り込んでくるということもあるだろう。
いずれにしても、この場合、ショックをそのまま体験することになる。読み手はそれで落ち込んだり、不快な気分を引きずるかもしれない。
余談であるけれど、もしそういう体験をした場合、著者を非難する人が多いのではないかという気がしている。それだけ衝撃を受けるということは自分の自我の方が弱っているのかもしれないと思い至る人がどれだけいるだろうか。本当は自分が弱っているので過大なダメージを受けたものであるのに、ダメージを与えた方を攻撃するということもあると僕は思っている。
さらに強烈な体験をする人たちもある。
これは個人の領域を通り越して心の深層の部分に影響をもたらしているのである。このショックは、「書いてあることがすべて自分にピッタリ当てはまる」といった体験となると僕は考えている。
これはどういうことなのかというと、読み手の無意識の深層の部分、ユング派の言う集合的無意識における元型との一致を表しているものであると僕は考えている。
AC(アダルトチルドレン)の信奉者たちがAC理論に遭遇した時にはこの種の体験をしていることもあるように思う。
集合無意識のような深層のものが意識に流入してくるので、彼らの中には急性精神病様の発作を起こす人もある。それだけ深層のものが刺激を受けていることを窺わせるのである。
これらの衝撃に対して、僕たちに何ができるだろうか。分量の関係でそれは次回のテーマにしよう。
(2022.7.27)
(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)
<高槻カウンセリングセンター便り~33通目:心理学ショック(続)>
心理学ショックを体験した時、いくつかの対策を立てることができる。僕の場合を述べようと思う。
まず、心理学という学問が自分に当てはまるということは稀である。というのは、心理学が対象にしているのは抽象であるからである。人間の、あるいは個人であってもいいのだけれど、その研究はその一部に関するものである。人間の一部を取り上げて研究しているのである。
従って、仮にそれが自分に当てはまるとしても、当てはまるのは自分の一部だけなのである。完全に当てはまるということはあり得ないのである。
この前提をまずは再確認する。
次に、それを書いた著者は僕のことを知らないはずである。そうであるならば、その著者が僕のことを書いているわけではないということが分かる。著者は他の誰かを想定してそれを書いたかもしれないが、それは僕ではないのである。
おそらく、これを読む人は「それがどうした」と思うかもしれないけれど、実はこれが一番大切なのだ。自分と自分以外の人との境界を明確にしなければならないのだ。ここを明確にすると、著者は別に僕にあてつけるつもりで書いているのではないし、著者の想定している誰かがたまたま僕と似ている所があったとしても、それが僕ではないということが分かるわけである。
心理学ショックを受ける時、自分でないものが自分に入り込んでくるような体験となっているのである。そこで、何が自分に属するものであり、何が著者に属するものであるかを明確にしていくわけである。
ここまでで十分なのであるけれど、僕はもう一歩先へ進めたい。ショックを和らげたら、今度は個人的感情抜きでその著書なり論文なりを読み直してみるのである。
この時、最初のショックがさして根拠のないものであることが分かる時もある。本の著者というものは読み手に効果を与えるような書き方をすることもある。ショックの根拠がただそれだけであることもある。
さて、ここまでお読みになられた方の中には、心理学の本を読むのにそこまでしないといけないのかと疑問を覚える方もおられるだろう。僕は「そうです」とお答えしたい。
心理学なんてものを勉強しようと思えば、それなりの心構えをしておいた方がいいと僕は考えている。僕から見ると、一般の人は軽々しく心理学に手を出し過ぎなのである。心理学ショックにあまりにも無防備なのである。
また、自分から論文を読んだり講義を聴いたりするのならまだましである。自己責任ということになるからである。
ところが、雑誌なんかでウッカリ目に留まったり、ラジオなんかでたまたま聴いたりした時、つまり非意図的に心理学に触れた時の方がショックは大きいだろうと思う。その場合でも、僕は上記のような対処をすることにしている。
心理学の本に限らず、カウンセラーのサイトなどを閲覧する時にも、閲覧者があまりに無防備であってもいけないのである。いつどこで衝撃を受けるか、その心構えくらいはしておいた方がいいのである。どんな場合でも「閲覧注意」の心構えはしておいた方が良いと僕は思う。
(2022.7.27)
(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)
<終わりに>
本ページでは高槻カウンセリングセンタ―便りの31通目から33通目までを再録しました。
運営するグーグルさんが投稿を削除するならご自由にどうぞというのが31通目の主旨であります。そこは運営の方で判断して削除するなりなんなりをすればよくて、その場を借りているだけの私にどうこうする権利はないと考えています。
自分の書き方を棚に上げておいて言うのも憚られるのですが、それでも言っておきたいのであります。心の問題について述べると不愉快に思う人が必ず現れるのであります。その問題自体に人をして耳をふさぎたくさせる性質のものが含まれるからであります。
32通目と33通目とはそれに関する内容でした。心理学ショックと私が名付けているところのものを述べました。心理学は人に衝撃を与えることがあるものです。実験心理学の知見でも、人間の行動とネズミとの間には差がないなどと思われると、それだけで衝撃を受ける人もあるだろうと思う。どんな研究であれ、心理学で衝撃を受ける人は現れるものであり、読む方もそれを覚悟しておくくらいがいいだろうと思います。
(2023年7月)
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)