6月3日:舞鶴へ 

6月3日(土):舞鶴へ 

 

 母が舞鶴の五郎岳に行きたいとは前々から言っていたことだ。僕も付き添いで行く予定をしているのだけれど、今朝、その日取りを決めた。僕と両親と全員が都合のいい日でないといけないのだ。僕の方は徹夜明けでも構わないのだが。 

 僕は今日は原稿書きをしようと決めていた。それで朝早くからパソコンの前に座って書いていた。すると、五郎岳は今日行こうということになったらしい。なんとまあ慌しいことで。僕は急いで準備をする。 

 急いで準備したのでいくつか忘れ物もした。飲み物くらい持って出ればよかったし、車の中は退屈するだろうから本の一冊も持って出ればよかった。 

 とにかく、父が運転して、僕は車中の人となる。 

 高速道路に入り、亀岡を抜ける。新録の山々がきれいだ。天気も良く、景色を眺めていると心地いい。 

 どういうルートで行ったのかよく分かっていないんだけれど、高速道路を降りて、いささか田舎道を走る。電車の線路が左手に見える。梅迫駅を過ぎ、真倉駅の辺りから街並みが見える。その先が西か東かの舞鶴駅で、それなりの都会という感じだ。一度、ゆっくり歩いてみたいと思った。 

 国道を走っていたのだけれど、その国道に沿って商店街があった。そこも気になっている。一度歩いてみたいものだ。 

 

 五郎岳の入り口。山頂まで道路が続いている。右に左に繰り返し蛇行して上る。広い駐車場に出る。そこからでも見晴らしがいいのだけれど、展望台に上がる。父は辞退したので、僕と母だけで上がる。 

 入場料を払い、エレベーターで展望台へ。規模は小さいながらもぐるりと一周出来て、360度のパノラマ風景が楽しめるようになっている。海は昨日の大雨の影響だろうか、水が濁っていて、湾口の辺りからは濁流が流れている。天気が良いだけに、これで海もきれいだったら他に言うことはないんだろうな。でも、山々はきれいだった。 

 この展望台、エレベーターのほかに階段があるようだ。母にはエレベーターで降りてもらって、僕は階段を下りてみることにした。階段は薄暗く、なんとなくいい雰囲気だ。船の階段を連想させる。踊り場などにはパネルが設置してあって、シベリア抑留や引き上げの歴史などが記されている。こういうのを一つ一つ読みながら降りたいところだけれど、両親が下で待っているから、一瞥だけして、とにかく降りる。 

 展望台を出る。この山頂までも歩いてこれるようだ。道が整備されているようである。今度来るときがあれば、下から登ってみたい。 

 

 次がどこに行くのか。赤レンガパークだとのこと。 

 車で国道を走る。間もなく赤レンガ造りの建物が見える。歴史がありそうだ。 

 自動車を駐車場に停め、赤レンガ博物館を見学。正直、「赤レンガって」などと思っていたのだけれど、なかなかいい。メソポタミアやエジプト文明の時代のレンガなども見ることができて、なかなか貴重な体験をした。建築が好きな人だったらもっと楽しめるのだろうな。 

 博物館を後にする。目の前は海だ。海上自衛隊があるので、それらしい船が浮かんでいる。湾内を一周する遊覧船がある。それに乗ることになった。 

 その前に昼食だ。赤レンガ館内の食堂で、僕は海軍カレーを食する。辛くはないけれど、ビーフカレーなんだろうか、コクがあるといった感じだ。それなりに美味しくいただいた。 

 昼食後は遊覧船だ。これの時間が決まっているためにいささか慌しい昼休みだ。船内はシートにゆったり座れるのだけれど、僕の場合、座っていると船酔いとかしそうだったので、僕は後部のデッキにてずっと直立することにした。 

 家族連れがいて、小さな女の子が二人、僕の周りをチョコマカするので困った。海に落ちたりしたらたいへんだし、僕に衝突して落ちたとかになると、たまらなく責任を感じてしまいそうだ。大人しくしておいてくれんかいなと、幾度となく心の中で祈願する。 

 船はなかなか快適であった。ただ、風が強く、波しぶきを何度かかぶってしまった。海は普段だったらもっときれいなのかもしれない。天気が良く、遠くまで見渡せることができ、それはそれで良かった。いろいろなものを見学できた。 

 中でも大きな軍艦のすぐ脇を通るところは圧巻ではあった。ロン毛の兄ちゃんが僕のすぐ脇に立ってパシャパシャと写真を撮っていた。なんか軍事マニア風の人だったな。僕は軍艦には興味がないから写真は撮らず。いや、船の上ではケータイを一切触らなかった。なんか酔いそうな気がして。 

 遊覧そのものは30分程度のもの。まあ、それなりに貴重な体験もしたかな。船の運転とガイドをしたのは元海上保安庁の人だとかなんだとか言っていたな。彼らはこういう形で第二の人生を送っておられるのだな。 

 

 さて、お次は引き揚げ記念館だ。赤レンガパークから車で10分ほどかかるらしい。途中、海上自衛隊の学校があって、生徒さんの一団が入っていった。彼らは戦争があったら戦地へ派遣されるのだろうな。何を好き好んでそんな世界に足を踏み入れたのだろうかと、そんなことを考えてしまった。 

 引き揚げ記念館。父たちの話では以前来た時と感じが違うそうだ。改築なんかをしたのだろう。ここではシベリア抑留からの引き揚げに関する資料が展示されている。館内では、高齢の人が講演をしていたけれど、あれは当時を知る経験者の語り部さんだろうか。じっくり話を聴いてもよかったかな。 

 この記念館、入口横手に展望台に上がる道が続いているようだ。公園のようになっているのかな。僕は観てみたかったのだけれど、父たちを待たせるわけにも行かないので、それはまた今度の課題にしよう。 

 次は引き揚げの現場があるそうなので、そこに行く。道路から桟橋が伸びている。これは昔のままなのだろうか。この場にシベリアから日本に引き揚げてきた人たちが着いたのだな。どんな思いで日本の地を踏んだのだろうか。戦争は間違っていたが、日本も間違っていた。そのしわ寄せが一般の人に覆いかぶさってくるものだ。 

 

 さて、以上で今日の小旅行は終わりだ。あとは帰宅するのみとなる。 

 来た道を帰ることになるそうだ。道中、魚の市場に寄る。母たちは何かお目当てのものがあるようだ。僕はこれといって欲しいものはない。駐車場でタバコを一服して、特に見るともなく店内を見て回る。「サーモンのユッケ」というものがあって、なんかそそられるものがあって、購入する。まぐろのユッケなどは聞いたことがあるけれど、サーモンは珍しい感じがする。どんなのか、早く帰って食したい気持ちになる。 

 高速道路に入る。土曜日だけれど、それほど混んでいない。サービスエリアで休憩するも、人が少なくゆっくりできる。みんな、舞鶴ではなく、どこか他へ行っているのかな。舞鶴はいい穴場かもしれないな。 

 

 帰宅。やれやれ、急に予定を変更したので参った。原稿書きの続きをする。今日はもっとこれをこなすつもりでいたが、まあいいか。母の付き添いも果たしたのだし、舞鶴旅行も悪くなかった。見知らぬ場所を見てみるのも、たまにはいいものだ。 

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

 

 

 

 

 

 

 

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