<#016-6>「子供に受けてほしい」 

 

<Q>「子供に受けてほしい」「子供を診てほしい」「子供を受けさせよと思います」等々 

 

<状況と背景> 

 質問者がIPにカウンセリングを受けてもらいたい、もしくは受けさせたいと希望している例です。このような例は、IPが大人である場合と児童である場合、あるいはIPが病院に通院・入院している場合などで、いくつか考え方も変わります。また、その質問者がIPの親である場合、兄弟姉妹である場合、従妹等である場合など、質問者とIPの続柄によっても考え方が変わってきます。 

 ここでは、IPが高校生以下の児童であり、質問者が母親で、IPが子供であるという例を取り上げます。IPが小学生であるか、高校生であるか、その年齢によっても回答が変わってきます。ここでは中学生くらいの年齢(実際、この質問はそれくらいの年齢層の子を持つ親からのものが多い)の児童を想定しています。 

 尚、ここでは子供の方もある程度カウンセリングを希望しているという場合を想定しています。子供が嫌がっているのに母親が強要しているといった例ではないことを前提にします。 

 

<A> 

 中学校だとスクールカウンセラーを置いてるところが多いでしょう。まずはスクールカウンセラーを利用してください。 

 もし、子供がスクールカウンセラーとは合わなくて、子供がカウンセラーを変更したいということであれば、そこから外部のカウンセラーを探すとよいでしょう。その旨を学校側、スクールカウンセラーさんにも伝えておいてください。 

 

<補足と解説> 

 過去にはこういうケースも受け持ったことがあるのですが、子供が外部のカウンセラーを利用すると、子供が学校と外部カウンセラーとの板挟みのような状況に陥ることがあります。 

 つまり、学校側は児童を預かっているので、何かとその子のことを気遣うわけであります。そしてその子のことをいろいろ知ろうとされるのです。だから、カウンセリングはどんなものなのかなどを子供に直接訊くということもあれば、そのカウンセラーのことを知りたがるということも起きるわけです。 

 カウンセラーの方も、学校に協力することになれば、学校側への報告が求められるわけであり、その際にクライアントである児童に、これこれこういうことを報告するけれどそれで良いかなどと、子供に確認を取り、許可を得なくてはならなくなります。 

 学校側と外部カウンセラーとの関係は、その児童を介して行われることになるわけであり、これが児童にとっては板挟みになるという意味であります。この状況が児童にとってとても辛そうだったので、特に重点的に取り上げたいと思います。 

 ここには学校-児童-カウンセラーという三者関係が生まれるわけです。本当はここに児童の親とか家族も入ってくるのですが、今はその三者に絞りましょう。この三者がそれぞれ良好な関係を築いていればまだましなのでありますが、例えば、学校側が外部カウンセラーをあまり快く思っていないとか、外部カウンセラーと学校側とで見解が食い違い、ギクシャクしているとか、あるいは児童が学校側を嫌悪しているとか、そういったことで三者関係が芳しくないと、その負担は児童に圧し掛かるものであります。 

 三者関係が良好であっても、前記のように児童が両者の間に挟まれるといった事態が生じるので、児童にとっては負担がかかるわけであります。 

 スクールカウンセラーさんを利用してくださいと私がお願いするのは、できるだけその子にかかる負担を軽減したいからであります。外部のカウンセラーが関与して三者関係を形成するよりも、学校側と児童の二者関係でなんとかなるのなら、それに越したことはないと私は考えています。 

 

 さて、少し余談になりますが、質問者はIPにかかる心的負担ということを考えないものであります。質問者は良かれと思ってIPにさまざまな提案をしたり、あれこれ手を回したりするのでありますが、IPの負担という観点がけっこう欠落しているのであります。私がここで提案したいことは、IPの負担という観点を質問者には持ってほしいということと、できるだけIPの負担の少ない選択肢から選んでほしいということなのであります。 

 

 外部カウンセラーよりも先にスクールカウンセラーさんを利用してくださいと言うのは、いきなり外部カウンセラーに頼むと、今後、その児童が学校側に気兼ねするようになるかもしれないからです。学校にもカウンセラーがいるのに、それを素通りして、外部のカウンセラーに頼んだということで、児童は後ろめたいような気持ちに襲われるかもしれません。 

 最初にスクールカウンセラーを利用した方がいいというのは、学校側と児童との関係にひびが入らないようにしたいからであります。それで、スクールカウンセラーさんとの間でその児童の問題が解消されれば、それでいいと私は考えています。ことさら外部のカウンセラーに頼まなくてもよかったのであれば、それに越したことはないのであります。 

 

 子供の負担を考えたら、外部カウンセラーに依頼するよりも、スクールカウンセラーに依頼する方がいいであろうということは理解していただけるでしょうか。実は、もう一つ厄介な性質の問題が潜んでいるのです。 

 どうして、質問者(母親)は外部のカウンセラーを求めるのでしょうか。スクールカウンセラーをどうして利用しないのでしょうか。あるいは、スクールカウンセラーと上手くいかないのでしょうか。そこにはそれぞれの母親なりの事情もあるかと思いますが、それは脇へ置いておきましょう。 

 私が述べたいことは、「子供と学校側との二者関係の枠内でやった方がいいということですね、そうしてみます」と母親が答えた時、すでにこの厄介な問題が影を潜めているのであります。母親は自分が無関係だと思い込んでいるのであります。 

 もし、母親の方がスクールカウンセラーを嫌悪していたり、不信感を持っていたりするとすれば、それだけで子供に負担がかかるのであります。スクールカウンセラーであれ、外部カウンセラーであれ、児童はカウンセラーを信頼していくのであり、同じように母親もそのカウンセラーを信頼していかなければならないのであります。もし、母親にそれができないということであれば、今度はカウンセラーと母親との間の板挟みにその子が陥ってしまうのであります。 

 従って、子供の問題だからということで、母親は自分を無関係だと思い込んではいけないのであり、カウンセラーに任せたらそれでいいなどと思い込んではいけないのであります。母親の態度が児童にも影響するのであります。児童の負担を軽減してあげた方がいいと私は思う者であり、母親もそのためにできること、努力するところのものがあるのであります。 

 

文責:寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

 

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