1月30日:高槻の温泉にて 

1月30日(水)高槻の温泉にて 

 

 高槻に温泉がある。「天神の湯」というのだ。そこの割引券をいただいたので、Yさんを誘って行ってみた。街中の温泉なんてって、僕はあまり期待していなかったのだけれど、なかなかきれいでよかった。新しいというのもあるかもしれないな。 

 脱衣場があって、中に入る。そこにはサウナと湯船が一つある。それから階段を上がると別の湯船がある。さらに上がるともう一つある。その上の最上階が露店風呂になっていた。 

 僕は最初に一番上の露天風呂から入った。それから一つずつ下に降りていって、最後はサウナで締めくくった。 

 サウナから眺めていて、僕は何気なく考えていた。「街中の温泉施設で、敷地面積が限られているから、こうして上へ上へと伸ばしていかなければならなかったんだな」などと考えている。 

 その時、ふと、今日のクライアントの夢を思い出した。その人の夢は、エスカレーターやエレベーター、飛行機を乗り継いで、上へ上へと上昇していくというものだった。僕はその人がなぜ上昇しなければいけないのか、その時は把握できなかった。こうして、高槻の温泉を眺めて、改めて「そうか」と気づいた。 

 横に広げられないから上へ伸ばすしかないのだ。この温泉のように。あのクライアントもそうなのではないかって、ふと思い至ったのだ。あのクライアントの生活も心も広がっていかないのだ。広がっていくことが制限されているのだ。だから上へ上へと伸ばしていかざるを得ないのではないか。そうだとすると、あの人はとても窮屈な世界で生きているのかもしれない。とても束縛されているのかもしれない。あの人は自分で思っている以上に、あるいは僕が理解している以上に、自由がないのだ、世界が広がっていかないのだ。 

 それに思い至ると、僕は手がかりを得たように感じる。実は、そのクライアントは最近来られた方で、どういう風に関わり、どの部分が「治療」されないといけないのか、僕は暗中模索している状態だった。こういう手がかりは僕に光明を与えてくれる。 

 サウナの中で、汗びっしょりになりながら、僕はきっとニンマリしていただろうと思う。周りの人からすれば、なんて気色悪い奴だと映ったかもしれない。そんなことどうだっていい。そういう光明が僕を支えてくれるのだから。 

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー 

 

 

 

 

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