5月9日(月):家族事情2
だいぶん膝の具合が良くなってきた。非常にゆっくりであれば曲げられる。平地であればある程度普通に歩ける。でも、やはり階段や段差はちょっとキツイ。
普通に歩けるというのが嬉しくて、夕方の空き時間に散歩に出る。違和感はあるけど、なかなかいい感じだ。
今日のクライアントから僕のブログを読んだと聞いた。読んでもらえるのは嬉しい気持ち半分、恥ずかしい気持ち半分といったところ。
先日、兄のことに少し触れたけど、今日のクライアントはその部分で「ズシーン」ときたそうだ。そんな衝撃を与えるつもりはなかったんだけど、悪いことをしたね。
兄は優秀な人間と見られていた。実際、優秀だったと思う。でも、それはある一時期までの話だ。兄が周囲の期待を背負ってくれていたら、兄にスポットライトが当たって、弟の僕は陰でコソコソできるのだけど、兄がアカンようになったら、一気に僕の方にスポットライトが浴びせられるのだ。それがカナンということなんだ。
兄は某一流ホテルのホテルマンだった。人事に不満があったのか、辞職し、もっと下のランクのホテルマンになった。その後、飲食の方に鞍替えするのだけれど、転々としているので僕にも兄の経歴がわからない。一時期は自分の店を持っていたけれど、潰してしまった。
兄はオーナーをやりたいだけなんだという気がする。自分の店を持った時もシェフを雇っていたのだ。これほど危なっかしい飲食店経営はない。店のファンは、いわばそのシェフのファンなんだ。だからこのシェフが他の店に引き抜かれたら、客ごとごっそり持っていかれることになる。
その後も雇われ店長みたいな形でいろんな店を任された。どれも長くは続かない。兄はなんだかんだと理由をつけているけれど、それが自分のパーソナリティに因があるとは考えていないようだ。
母は「兄弟なんだから仲良くしておくれ」と僕に言ったことがある。僕もそうしたいのはやまやまなのだけど、接点がないのだ。兄にはどこか一流志向があるのか、ちょっと高級な飲食店をやるんだ。それが困るのだ。いっそのこと焼き鳥屋でもやってくれたら、少々電車を乗り継いででも僕は通うのだけど、フレンチや料亭は僕にはお呼びじゃない。
振り返ると、兄が一流ホテルを辞める前、僕にもそれを漏らしたことがある。僕は辞めない方がいいと言ったのだ。兄は「お前までそんなこと言うか」という感じのことを言ったように記憶している。「ブルータス、お前もか」といったところだ。
当時、バブル崩壊後の不況が尾を引いていて、就職難の時代だった。僕の周囲の人でも就職がなかなか決まらないという人がたくさんいた。僕の言いたかったことは、もう少し待ってみて、景気の様子を見てから決めてもいいのではないかということだった。まあ、周りが反対すればするほど、突っ走ってしまうのが兄らしいという感じはするが。
兄のマンションと店は、特に両親の悩みの種だったようだ。父が時々兄のことで愚痴るのだけど、その愚痴を僕が受けないといけないという、なんとも理不尽な状況もあった。
兄のことで書いているけど、僕の言うことなんかまだましな方だ。仲の良かった某居酒屋の大将は、僕が悩んでいる様子なので訳を尋ねてきた。僕は兄のことで今家族が困っているんだという話をした。兄のことを聞いて、その大将、「お兄さんは長男(第一子)の悪いところ全部持ってはるような人やな」と言った。身内以外の人間はそのものズバリを言うものだと思った。僕にも本当にそう思えてくる。
ああ、兄のことでクドクド書いている自分がイヤになる。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)