5月26日(火):「テスト会場の夢」
(夢)「テスト会場の夢」
テストを受けに行くことになっていた。僕はどこかの家か宿泊所のようなところにいる。そこからテスト会場が見えている。道路を横切り、角を一つ曲がる。会場の建物が見えている。僕はその方向に向かって歩く。ところが、会場を通り過ぎてしまい、おかしいと思い、来た道を戻ってみる。すると、鋭角に切り曲がった枝道が見えた。先ほどは、その枝道が鋭角すぎて見えなかったのだ。こちらの方向からなら見落とすことはなかっただろう。
枝道に入る。さらに角をいくつか曲がる。どうにか会場に到着する。
テスト前だったのか後だったのかわからないが、会場前の広場でみんなが集まっている。どういうわけか全員で合唱している。僕もその中にいて謳っていた。その後、一人、歌が上手だと自慢する男性がいた。僕は彼の歌うのを聴きたいと思った。でも、他の人たちと談笑しているうちに彼の声を聴き損ねた。
そこに今度は先生みたいな人が出てきて、一人一人順番に名前を読み上げる。名前を呼ばれると先生の前に行って、簡単な質疑応答を受けなければならなかった。
一人の女性の名前が呼ばれた。僕の知っている人のようだった。向こうの方で返事が上がる。名前を呼ばれた女性は、僕に近づいてきた。そして、僕の背後にぴったりと立ったような気配がした。僕は振り返るが、そこには誰もいない。そして、正面を向くと、目の前に彼女がいて、僕は驚いた。
彼女は片手で僕のネクタイをつかみ、僕を引き寄せ、もう一方の手で僕の胸を突きながら、「どうして置いてきぼりにするのよ」と問い詰めてきた。僕は両手を上げ、半ば冗談、半ば宥めるように、「置いてきぼりだなんて、そんなこと」と言いかける。すると、彼女は周囲のみんなに聞こえるくらいの大声で、「私の好きな人は、私を置いてきぼりにした人です」と叫んだ。僕は困惑してしまった。
(連想と感想)
夢の中の位置関係、情景は以下に図示しておく。
テストは、自分が試されると同時に、一段上に上がるための関門のようなものというイメージがある。それに合格するか否かで、自分が前進するか停滞するかを分けるものと捉えている。
僕がテストを受けに行くということは、その関門をくぐる時期だという感じがする。また、家から近い所にテスト会場があるということも、僕がそれに近い位置に来ているということなのかもしれない。
会場に向かう。目的地に向かうということだ。でも、一回目は辿り着けない。通り過ぎてしまうのだ。これはテストに対しての逃避願望なのかもしれない。ここで夢が終わっていたらそう解釈したかもしれない。
夢では続きがあって、どうも行き過ぎたようだからと、今来た道を逆に辿って行く。そうすると来る時には見えなかった枝道が見える。その枝道に入るのが正解だったわけだ。目的地に到着するためには、一方向に進んでいては通り過ぎてしまう、反対の方向に進み返してみると新たな道、見落としていた道が見えるのかもしれない。反対の方向に進むとは、過去に向かうということでもあるのかもしれない。
なぜか全員で合唱している。音楽は感情に訴える芸術だと僕は信じているので、全員で合唱して、しかも僕もその中にいて一緒に歌うということは、感情に参加しなければいけないということなのかと思った。
そこに歌自慢が現れる。この自慢家は僕の自己顕示傾向の表れだろう。それに関わろうとするが、関わり損ねている。
この歌自慢の人は、同時に先日飲み屋で出会った人を思い出した。その人は音楽家らしく、リコーダーを吹かせたら世界一だと豪語した。そして彼は演奏して、僕たちはそれに付き合うことになった。一曲だけならまだしも、彼は調子こいて三曲も演奏した。とても聴いていられない。僕は多少でもクラリネットをやった経験があるので、彼のリコーダー演奏のアラが目についてならなかった。息継ぎはなっていないし、スラーでは音が泳いでいるしで、基本的な部分ができていないと思った。僕はよっぽど彼にそれを指摘してやろうかと思ったが思い止まったのだった。
その後で、僕が置いてきぼりにしていると言う女性が登場する。どうして置いてきぼりにするのと彼女は問い詰めてくるのだけど、それほど敵意に満ちた感じではなかった。この女性は現実の女性とまったく関係がないと僕は思う。むしろ、過去の女性たちとか、僕の中の女性的な要素といった部分だと解している。女性的な要素とは、言い換えれば母性原理ということでもあるかもしれない。確かに、僕はそういうものを置いてきぼりにしている自分に気づく。つまり、ここしばらく男性原理、父性原理の生き方をしているようにも思う。それは目的達成的な生き方であると同時に、厳格であり、いささか窮屈な生き方になってしまう。そういう生き方を、この最近はしてしまっているということに気づく。
また、この女性の訴えは、僕に愛情を置いてきぼりにするなというようにも聞こえてくる。つまり恋愛である。僕が一時期放棄してしまっていた感情である。僕はまたそれを放棄しそうになっているのかもしれない。夢の女性はそれを僕に思い出させてくれた感じがしている。
いつものようにこの夢に教えられたことをまとめておこう。
まず、闇雲に前に進もうとすると、目的地に到着できないどころか、見落としてしまう道が出てしまうということ。前に進むよりも、来た道を辿りなおして見よという教えだ。
集合的要素の感情(合唱で表されている)に参加せよということ。自己顕示性に関わるということ。女性性や愛情を置き去りにしてはいけないということ。それらがテストと関連しているのだから、それらをしていくことが一段上がるために必要なことだと、そのように僕はこの夢を理解した。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)