<#007-2>臨床日誌(2)~言語と非言語
コミュニケーション、情報伝達(メッセージ)を言語的なものと非言語的なものとに分ける考え方がある。
ある学者さんの研究では、コミュニケーションのうち、言語的な部分が3割、非言語が7割占めるということらしい。この数字から非言語的な部分が重要なのだと考える人たちもある。僕も非言語領域を軽視するわけではないが、この人たちからすると非言語が7割もあり、言語的な部分が3割しかないということになっているのだろう。
僕は逆である。言語的なものが3割もあり、非言語的なものが7割しかないと考えている。そもそもこの対比が不公平なのである。言語的領域は限られているが、非言語的領域に属するものは無限である。
例えば、僕が対面で相手の話を聴いているという場面があるとしよう。彼は言葉を使って僕に話しかける。
彼の言葉以外に、あるいはそれに伴って僕に伝えてくるメッセージがある。これが非言語領域のものである。
まず、話す彼の表情がある。彼の態度、姿勢、しぐさ、そうしたものが言葉と同時に僕になんらかの情報を伝えてくる。これらは非言語的メッセージとなる。
その時の彼の服装、アクセサリーなども同じく僕に伝えてくるものがある。
彼の体形、太っているとか痩せているとか、背が高いとか低いとか、そうしたことも非言語的メッセージとして僕に伝えてくる。彼の身体的特徴も非言語の領域に含まれるものである。
彼のヘアスタイルとか、髭の有無とか、彼の容貌も何らかのメッセージとなる。
彼の体臭であるとか、香水等の臭覚的刺激も非言語メッセージになる。
さらに環境的な要因もある。彼が話すその場所の要因である。どんな部屋か、どんな装飾品があるか、さらにはどんなBGMが流れているか、こうしたことも非言語的メッセージとなる。
環境が非言語的メッセージとなるという点は理解してもらえるだろうか。愛を告白するなら、ゴミゴミした小汚い居酒屋でやるより、静かでロマンチックな場所でする方が上手くいくことでしょう。愛のコトバは、その環境という非言語的メッセージを伴って相手に届くのではないか。
さて、以上は比較的分かりやすい非言語的領域であるが、ここから微妙な領域に入る。言語的領域がどこまでであるか、その範疇によって言語に含めるか非言語に含めるか分かれるであろう領域である。ここでは言語的領域をあくまでも言語に限定しよう。
そうすると、彼の話のその話す声の大きさ、速度、トーン、イントネーション、なども非言語メッセージになる。口ごもったり、どもったり、噛んだり、そういったことも非言語的メッセージに含まれる。
さらに、準言語と呼ばれるものも非言語に含めることができる。これは、例えば、「えーと」「そうそう」「あっ」などのように、それ自体では言語的意味合いを持たない音声である。
これらは言語的メッセージを補足する形となるが、言語的メッセージのような明確な意味を伝えないかもしれない。仮に言語的メッセージの領域に含めるとしても、限りなく非言語的メッセージに近いものであると言えるのではないかと思う。
このように見ていくと、非言語の領域に属するものが圧倒的に多く、言語的に属するものはかなり限られることになる。それでも言語的メッセージが3割も占めるとすれば、言語的メッセージはかなり強いと言わざるを得ないのである。
そうと言って7割をないがしろにするわけにもいかない。昨日述べたように、僕は面接でやっていく。リモートでは非言語の部分が制限されてしまうと僕は信じている。
(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)