12月15日:キネマ館~10・11月に観た映画(3) 

12月15日(土):キネマ館~10・11月に観た映画(3)

 

5『裏切りの荒野』

 フランコ・ネロ主演のマカロニウエスタンだ。「カルメン」を下敷きにして作られている、文芸調の作品だ。

 このフランコ・ネロが最初から最後までカルメンに振り回されっぱなしという役どころである。いくら裏切られてもカルメンを諦めることができず、殺人罪に問われ、山賊にまで身を滅ぼしてしまうという、けっこうなダメンズを演じる。

 情熱的な愛を描いているといえば聞こえがいいが、マカロニらしいアクションやキレに欠くように感じた。

 見どころは、やはりクラウス・キンスキーである。この人目当てでレンタルしたようなものだが、物語の中盤から登場する。山賊の親分で、カルメンの元夫という役柄である。キンスキーもやはりカルメンに裏切られる男を演じ、ネロとキンスキーのダメンズどうしが最後には戦うことになる。

 作品としては悪くないんだけど、どうもネロやキンスキーのキャラが生かされていないような感じがしてならない。唯我独断的映画評は2つ星半というところか。

 

6『怪人カリガリ博士』

 カリガリ博士というのは、戦前の映画に登場する怪人である。これはそのリメイクということになる。僕がこれをレンタルしたのは、脚本がロバート・ブロックであるという理由だけである。ちょうど『サイコ』と同時期の仕事なので、やっぱりというか、案の定というか、『サイコ』に通じるテーマを取り上げている。

 物語はドライブを楽しむ女性から始まる。タイヤがパンクしてしまい、立ち往生してしまった彼女は、ようやく一軒の館を見つける。それがカリガリ博士の屋敷である。彼女は一晩の宿をもてなされるが、翌朝から、なぜかカリガリ博士たちは彼女を帰そうとしない。なんとかして脱出しようと繰り返し試みるも、彼女の計画は上手くいかず、彼女はカリガリ博士を敵対視していくようになる上に、精神のバランスをも失っていく。

 そうした物語が、セット感丸出しの情景、チープな視覚効果などを伴って展開されていく。結末を知ってから、もう一度鑑賞してみると、セリフの至る所に伏線が張られていることが分かり、よくできたシナリオだと改めて感心したが、初見では見逃してしまうところも多かった。繰り返し観ると評価が変わっていくというタイプの映画だと思う。もっとも、繰り返し鑑賞するのもキツイかもしれないが。

 1960年。ロバート・ブロックは、一方では『サイコ』を書き、他方では本作を書いている。あっちが名作になって、こっちがB級程度の作品になったのは、予算や出演者などの関係もあるだろう。それ以外に、『サイコ』のような劇的なシーン(例えばシャワー室のシーンなど)に欠けていたり、結末の真相解明部分(『サイコ』では精神分析家みたいな人がノーマンに起きたことを説明するくだり)に説得力が欠けていたりする。その辺りで『サイコ』よりも見劣りがしてしまうかもしれない。

 それでも、本作は繰り返し、精神分析の視点から鑑賞していきたい作品だと僕は感じている。いつかまたレンタルしようと今では考えている。

 僕の唯我独断的映画評は3つ星半だ。B級ホラーなんだけど、僕の趣味や興味に合うので高評価となった。

 

 

7・『ヴェラクルス』

 バート・ランカスターとゲーリー・クーパー共演の西部劇。マスケンさんの西部劇本を読んで、どうしても見たくなった。マスケンさんの指摘する通り、この作品は野球のような攻守交代劇が展開される。

 舞台はメキシコ革命。メキシコ側に味方するかアメリカ側に味方するか、より金を多く出す方に付くという、外部志向型人間が確かに登場する。ランカスターがそれを演じる。内的な主義や主張を明確に持っているわけではなく、金の額で自分の行動を決定するような性格を演じている。

 黒服に身を包み、ニッと笑うランカスターは完全に悪役である。その部下に、アーネスト・ボーグナインやジャック・イーラム、さらに若いチャールズ・ブロンソンらが扮する。

 金を巡って、裏をかいたりかかれたり、あっちに味方したりこっちに味方したりと、なかなか節操がないが、それがまた面白いところである。

 最後にはランカスターとクーパーの一騎打ちということになるが、クーパーに花を持たせる形で幕を閉じる。

 二転三転する物語展開が小気味良く、とてもよくできたストーリーだと感心する。僕の唯我独断的映画評では4つ星だ。見て損はない一作だ。

 

 立て続けにレンタルして、尚且つ、鑑賞してから若干の時間が経過しているので、幾分内容を忘れたところもあるけど、僕の中に残っている印象だけでこれを書いている。いつか、再鑑賞する機会があったら、再度取り上げてみたい作品ばかりだ。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

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