9月16日(日):外れくじの夜
この二日間はちょっとばかり忙しかった。今日の最後の仕事を終えると、案の定、ビールが飲みたいという渇望に襲われ始めた。
僕は自分には甘いので、そういう渇望には素直に従う。
でも、日曜日ということもあって、行く所がない。あまり気は進まないけど、「餃子の王将」に入る。
それなりに混んではいるけど、満席というわけではない。ビールと一品、注文する。そこまでは良かった。追加の一品とビールをもう一本注文する。ビールが先に出てくるかと思いきや、なかなか来ない。あんなの、冷蔵庫からビールを出して、ポンと栓を抜いて、持って来るだけのことだと思うのに、何をモタモタしてるのやら。そうこうするうちに、追加の一品が先に出てきた。店員は「ビール、すぐお持ちします」と言って去って行ったが、しばらく待っても来ない。もうダメだ、こんな所で飲食してられない。こうして、ほとんどを残した追加一品と、飲むことのなかった二本目のビールの代金も含めて、支払い、さっさと店を出た。
混雑して待つのは構わない。けど、これは明らかに後回しにされているようにしか僕には思えなかった。後回しにされるのだったら、いくら待っても無駄である。それに、後回しにされるような店には居たくない。
ここの「王将」はだんだんひどくなる。以前はもっとましだったのに、店長が変わって、ザツになっている。いつぞやは支払いして「ありがとうございました」も言わなかった。Eという奴だ。僕の前に並んでいた客までは愛想が良かったのに、僕の時にはイヤイヤレジを打っている感じをモロに出していた。そんなにイヤなら出入り禁止にしたらいいのにとも思うのだ。僕が何をしたのかは僕自身には分からない。自分には身に覚えがないのだけど、そんな対応されるくらいなら、出入り禁止にしてくれる方がありがたい。
腐った気持ちで王将を出て、近くの灰皿でタバコを吸っている。「おう、久しぶりやないけ」と声をかけてくる男がいる。チョイチョイと飲み屋で顔を合わせる人だ。別に親しくしたいとは思わない。こいつとも縁を切りたいのだ。でも、向こうから声をかけてくる。僕は素っ気ない返事をしておく。
王将を出たのはいいけど、行く所がない。駅中の「はな」に行く。ここは今年店長が変わって、三代目のはずだ。初代の店長とは仲が良かった。二代目は、それほど親しくしていたわけでもないけど、その辺で出会うと挨拶をしてくれる人だった。三代目とは、今のところ無縁である。
僕が入店した時、ホールはバイトの女子大生一人だった。カウンターとテーブル席と、合わせて20人近い客がいたのではないだろうか。そこを若い女性が一人で任されている。注文を聞き、料理を配膳し、飲み物を作る。その合間を縫って、酔っ払いの相手をさせられてしまう。ひどいものだった。
以前の店長はそれをしなかった。ホールが一人にならないように、キッチンの人間を回すなどの対応をしていたように思う。ちょっとずさんになったように思った。
酔っ払いと言えば、僕の二つほど隣の席で、この店でケンカ騒ぎをした客が座っている。なんでこんな男が普通に飲んでいるのかと、腹立たしく思う。それこそ出入り禁止にすればいいのに。
結局、前の店長が優秀であればあるほど、新しい店長になると店がひどく見えてくるものである。先日の「サイゼリア」でもそうだ。なんで喫煙席に高校生の一団がいるのか、理解に苦しむ。
「はな」を出る。どうも今日は芳しくないという気持ちになり始めている。いや、そんなことはないなどと思ったのが間違いの元、次に行きつけのバーに行く。
そのバーでも何もいいことがなく。それで、最近新しくできた立ち飲み屋に行くことにした。今日は日曜日だけど、もし開いていれば営業している時間だ。22時半頃だった。
行ってみる。その立ち飲み屋が閉店しようとしている。店を早く閉めて、客たちと一緒にスナックに行くことになったそうだ。営業時間内は営業してくれよ、と僕は思った。
「一緒に行きませんか」と誘われた。僕は考えた。今日は外れくじばかりを引かされている感じがしてならない。もう一軒行くと、そこでも何か外れくじを引かされそうに思ったので、お誘いは辞退させてもらった。
そろそろ潮時なのだと思う。僕も高槻で仕事をしている以上、地元が繁盛するといいなとは思う。飲むときもできるだけこの地元でと決めていたけど、どうやら、引き際に差し掛かっているようだ。
(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)