<#1-11>同席者不可ということ

 

 私のカウンセリングは個人面接であり、1対1の対面形式で行います。従って、そこではクライアント以外の同席者を認めないということになります。同じことは私の方にも言えることでありまして、私は私以外のスタッフ(スタッフなんていないのですが)を同席させるわけにはいかないのであります。

 同席者というのは、大抵の場合、クライアントの家族であります。それは夫(妻)の場合もありますし、親とか子供の場合もあります。さらに同席者が同席を求む場合と、クライアントが同席者の同席を求める場合とあります。いずれにしても、同席は認めていません。

 

 過去にはクライアントが望む場合に限り同席者を認めていたのですが、現在では一切禁じています。クライアント本人が望んでも私は禁じます。同席者と一緒でなければ受けないということであれば、私の方からお断りしますので、他所さんへ行ってくださいと言うしかないのであります。

 なぜ同席者を禁止するのかということですが、一つ目の理由は、私が同時に複数の人に注意を集中することができないからであります。目の前の人と関わりながら、その隣の人にも注意を払うというようなことが苦手であるからであります。

 二つ目の理由は、同席者がクライアントに与えている影響であります。特に役割に囚われてしまうということが起きるのであります。例えば女性クライアントの場合、そこに夫が同席することで彼女は妻役割を取ってしまうのであります。彼女は彼女自身で語ることができなくなり、妻の立場で語るしかなくなるなどのことが生じるというわけであります。

 それの何が問題なのかと言いますと、私はまずその人が本来的にどういう人であるかを知りたいのであります。そのため、カウンセリングの時間ではクライアントに彼自身であってほしいと思うのであります。同席者が存在することで、クライアントは彼自身であることが制限されてしまうのであります。

 三つ目の理由として、同席者はクライアントに弊害をもたらすと私は思うからであります。同席者はクライアントに役割を取らせてしまうだけでなく、監督官や監視者のような立場を取る同席者もおられるのであります。クライアントが何を言うかをチェックしているようであったり、実際、クライアントが言ったことを訂正する(クライアントにとっての事実が認められず、同席者の認める事実が事実であるということ)同席者もある。私の経験では、同席者はカウンセリングの場を支配したがるところがあると感じています。同席者はただ同席しているだけでなく、クライアントの言動に制限を課し、場全体を暗に支配していたりするのであります。同席者とここでは言ってますが、邪魔者でしかないのであります。

 

 次に、二人が一緒にカウンセリングを求めるという例があります。これは主に夫婦であることが多いのでありますが、妻と夫が一緒にカウンセリングを受けるということであります。

 上記までの話は、クライアントとその同伴者といったニュアンスだったのですが、ここでは二人がクライアントであるということになります。

 しかしながら、二人クライアントは成立しないことが多いと私は感じています。ほとんど成立することはないと私は考えています。

 というのは、二人が等しくカウンセリングを求めるということはまずないと私は感じているからであります。一方がより熱心であり、他方がそれに追従しているといったパターンが大部分であるように感じています。一方がクライアントであり、他方は傍観者であったり追従者であったりするわけであります。

 いささか極論であるとも思うのですが、例えばこれは夫婦の問題だから一緒にカウンセリングを受けようと考える妻がいるとしましょう。この妻は夫婦二人でカウンセリングを受けることをカウンセラーに求めるのです。このような場合、しばしば、妻は「これは夫の問題である」とみなしていることが多いのであります。そして、妻は傍観者の立場に立つことも結構あるのであります。ある意味では、それは夫の問題であるとみなしていることで、夫にすべてを丸投げしているとも言えるのですが、この妻はカウンセリングには参加しないのであります。

 また、夫も妻もカウンセリングを受けることを求めて、一緒に受けに来た場合でも、お互いにそれは「相手の問題だ」とみなしていることもあります。このような場合、カウンセリングはお互いに相手の悪いところをあげつらうだけのものになり、実りある面接とならないことも多いのであります。

 さまざまなケース、パターンがあるのですが、いずれにしても、私の経験では、同席者がいて上手くいったことなんてないのであります。むしろ、同席者がクライアントをいかに妨害しているかが目についてしまい、同席者などいない方がましだと思う次第であります。

 

 また、クライアントが若い母親の場合、乳幼児を連れてくることがあります。母親がクライアントで、乳幼児が同席者ということになるわけですが、これも禁じています。カウンセリングの間、子供を誰かに見てもらって、母親一人で受けに来るように私は求めています。

 同席者が乳児の場合、上記で述べてきた理由とはまた別の、いくつか特徴的な理由があります。

 一つ目の理由は、乳幼児が室内を汚したりすることがあります。それが困るというのがあります。これは私の側の困難であります。

 二つ目の理由は、母親は乳児の面倒を見ながらカウンセリング作業を同時にしなければならないということであり、母親の負担が大きすぎるのであります。これは母親の困難であります。

 三つ目の理由は、しばしば生じることでありますが、乳児が母親の感情を先取りして、母親が表現するよりも先に反応してしまうのであります。母親の不安や悲哀、不幸が、おそらく漠然とした形で乳児に伝達されてしまうのであります。乳児からすれば、いきなり不穏な空気が充満し、平和だった世界が急に悪い世界に転じてしまったように体験されてしまうのではないかと思います。これは乳児の側の困難ということになるわけですが、子供さんもかわいそうであります。

 

 長く綴ってきましたが、まとめておきましょう。

 カウンセリングは1対1で行います。同席者は不可であり、それが乳幼児であっても不可であります。クライアントの付き添いで来られても、入室はクライアント一人でお願いしております。

 

(文責:寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

 

 

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