7月19日:宿題

7月19日(日):宿題

 

 今週はあまり忙しくはなかった。それでも二人、新規のクライアントをお迎えすることができたことは喜ばしいことだった。

 新規の人と会うのは非常に緊張するものである。前日はほとんど眠れないくらいだ。経験を積めば慣れるかと思い込んでいたけれど、現実はそうはいかず、新しい人と会うとなると、その人がどんな人であるのか、僕が好きになれるか否か、そんなことばかり気になり、緊張することただならないほどだ。

 ただ、どんな問題が持ち込まれるだろうかといった不安だけは減少した。クライアントがどんな問題を持ち込んで来ようと、基本的には人間の問題というのは限られているものである。ごく少数の問題に多数のヴァリエーションがあるだけである。

 さて、二人とも会ってみると感じのいい人たちである。僕は好きになれそうである。クライアントの問題の種類よりも、僕が好きになれるかどうかが決定的に重要である。心の病というものは、臨床家とクライアントの関係が良好な場合においてのみ改善が見込まれるものであると思う。一方が不信感や嫌悪感を抱けばそこで終わるものだと僕は信じている。

 信頼関係を維持するということは難しいことである。それを形成することも壊すことも簡単である。ただ、それを維持していくとなると双方の努力が求められるものなのだ。主体的な努力がなければ維持できないものである。

 まあ、その話はさておき、僕はこの二人から宿題をいただいた。これからぼくはその宿題を紐解いていく。それはジャングルを彷徨うようなものなのだ。どこに向かえばいいのか、どの道が安全なのか見当もつかない。見晴らしがいいとは限らず、うっそうとした樹林に視界が遮られている中で手探りで進むようなこともある。暗中模索していく中で、何か光が見えてくれば希望が持てる。しかし、そのような希望が持てるようになるまでには何か月もかかるかもしれない。

 どのクライアントも僕に宿題を与えていく。それはあたかも僕に挑戦してくるかのようである。僕はただそれを引き受ける。

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

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