2月11日:再来は再発に非ず

2月11日(土)再来は再発に非ず

 

 昨日、約一年ほど前に終結したクライアントが再び来てくれた。以前来てくれていた人が、こうして再び来てくれるのは、僕にとって、とても嬉しいことなのだ。なぜなら、その人は僕のことを覚えていてくれて、以前と変わらぬ信頼を寄こしてくれているからである。

 一旦終了したクライアントが再び来るなんて、それは「問題」や「病気」が「再発」したのじゃないかと思われる方もおられるかもしれない。僕も若い頃はそのような考え方をしていた。だから、終結しては再来してを繰り返すクライアントの事例なんかを読むと、なぜこの人はカウンセリングから離れられないのだろうと疑問に感じたりもした。今の僕が考えているところでは、カウンセリングへの再来は再発に非ずということだ

 仕事をしていて、しばしば「再発しませんか」と問われることがある。僕は「再発したらまた受ければいい」と答えるようにしているのだけど、「そんなの絶対イヤだ」とまでおっしゃる方もおられる。「神経症的」な傾向のある人ほど、一回で完全に終わらせたいと思うようだ。

 確かに、人生の一時期においてカウンセリングを受け、その後の人生をカウンセリングなしで生きていかれる人もある。一方で、人生の折に触れて、繰り返しカウンセリング期間を作る人もある。果たして、どちらの方が豊かな人生を送っておられることだろう。

 僕がクリニックで勤めていた頃、既に十数年通われているクライアントがおられた。僕が見た限りでは、その人はカウンセリングから離れても十分やっていけそうに思えた。それなのに、どうして先生はその人と会い続けるのだろうか。当時の僕には分からなかった。

 今の僕なら、きっとこう考えるだろう。生涯に渡って会い続けることができるカウンセラーを獲得できたこの人は、とても幸せだろうなということである。そして、最初にこの人とこのカウンセラーとを結び付けていたものとは、まったく違ったもので今は結びついているのだろうなと、考えるだろう。いずれにしても、こういう関係を体験できるクライアントは、僕から見て、とても幸せに見えるのである。

 人間は誰でも生きている間にいろんなことを経験するものだろう。いろんな状況に遭遇し、出来事に巻き込まれ、様々な人と対人関係を体験するものではないだろうか。その中には不本意なことや不公平極まりないこともあるだろう。いいことばかりではないはずだ。その都度、落ち込み、苦悩し、停滞してということを体験するだろうと思う。そういう時に、「以前のカウンセリングで自分は何も変わっていない。二度とカウンセラーなんかと会うか」と思う人もあれば、「また、苦しくなってきた。以前のカウンセラーに聴いてもらおう」と思う人もあるだろう。あなたから見て、どちらがより「生きやすい」人生を送っているように見えるだろうか。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー

 

 

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