1月18日(水):女性友達に捧げる(20)
夜、二人で会う時はいつも、僕は終電で帰るようにしていた。初めて外泊したのは3月になってからだった。彼女の方が泊まりたいと言い出したのである。
それまで、僕は彼女と一緒に泊まるということをほとんど考えていなかった。どうもその一線を超すことに抵抗感があったのだ。もちろん、一緒に夜を過ごせたら愉しいだろうなあという漠然とした期待はあった。でも、それは関係がもっと深まってからだというように僕は個人的に決めていたのである。
初めてホテルに泊まった時、彼女の怯えようは尋常ではなかった。彼女に何が生じていたのか、僕は知らない。ただ、彼女は物凄く脅えているようで、必死に僕に縋り付いてくる感じであった。彼女を放っておけないという気持ちになった。
セックスしたのは二度目に泊まった時からだ。セックスは何一ついいとは思わない。僕は途中で萎えてしまった。それは「できてしまった婚」を僕が恐れていたというのもある。僕が萎えると、彼女は僕のモノを咥えてくれる。はっきり言う、僕は嫌悪感を覚えた。彼女にそういうことをしてほしくなかったのだ。一緒に寝るのは幸せだったけど、セックスになると、何かが違うという気持ちに僕は襲われたのだ。
彼女はそれを愛情だと思っているのかもしれない。確かに、愛する人とセックスもできた方がいいだろうとは思う。しかし、セックスもフェラチオも、金を出せばしてくれるものである。金で買える行為なのである。つまり、僕が金を出せば、彼女がしてくれたような行為を僕にしてくれる人たちがいるわけである。簡単に代用が手に入るわけである。僕はそういうものに愛情を感じないのである。彼女でなければならないものを、僕は彼女に求めていたのだ。
結局、僕のアレが萎えてしまうので、セックスは不完全燃焼で終わるのであるが、それでは彼女も不満が残るだろうと思って、彼女のクリトリスを指で愛撫してあげることにした。それで何とか満足してくれという思いだった。しかしまあ、僕は驚いた。彼女がとても感じるのである。翌朝、彼女曰く、僕のクリトリス愛撫が「上手で、優しかった」ということだった。僕にそういう「テクニック」があるとは思わないのだけど、そんなことよりも僕の気持ちの方を理解してくれると嬉しかったのである。「満足したかい?」と尋ねると、彼女は満足したと答えてくれたので、一応、僕のしたことには意味があると思って、それで良しとしている。
セックスに関する考え方も、彼女と僕とでは水と油だったのかもしれない。その行為に僕はほとんど重点を置いていない。ただ、夜を一緒に過ごせるというだけで、僕は十分だったのである。一晩、二人だけで過ごし、お互いに相手を独占しあう。その時間、僕が彼女を独占するのと同じように、彼女が僕を独り占めできるよう、僕は自分を差し出す。翌日になれば、彼女には彼女の仕事があり、僕には僕の仕事がある。お互いに自分の生活に戻ってしまう。それまでの時間、「二人だけ」体験をする。彼女の方はどう思っているか知らないが、その時間は僕にとっては非常に貴重なものだった。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)