11月16日:良書は空腹をも満たす

11月16日(水)良書は空腹をも満たす

 

 昨日、入った古本屋は「ブックオフ」だった。大型の古本屋さんで、僕はあまりあの手の店は好きではないのである。古本屋には個性があって、そこの主人の好みがもろに品ぞろえに投影されているのが私は好きなのだが、大型の古本屋さんは没個性的である。それに値札をお構いなしに貼りつけられるのも困りものである。

 しかし、大型店にはその良さもある。「ブックオフ」のいいところは、本の価値を一切無視してくれているということである。それが絶版であろうかなかろうかお構いなし、初版ものか再版ものかも関係なし、著者のサインがあってもなくても一緒という、買う側からすればありがたい話である。本の定価に基づいて値段を設定しているようなので、出版の古い珍しい本が破格の値段で叩き売りされていたりする。ただ、分冊ものは不完全なパターンが多い。上下巻程度なら揃っていることはあっても、三冊以上の本、上中下巻や全4冊などといったものは、必ずと言っていいほど、途中が欠けていたり、最後まで揃っていなかったりするのである。

 昨日、「デイヴィッド・コパフィールド」を買ってから、真っ直ぐに帰宅すればいいものを、喫茶店に入って、早速読み始める。序に言っておくと、この時、午後の三時にタバコが空になる。タバコ代のことを計算に入れていなかった僕は、そこから半強制的に禁煙することになった。二時間ほど読んで、帰宅する。帰宅したら、さすがにしんどくて、頭がフラフラする感じがして仕方がなかった。僕は布団を敷いて、休むことにした。

 「デイヴィッド・コパフィールド」もいいが、ドストエフスキー「虐げられた人々」がまだ読み終わっていなかった。あと80ページほどで終了だから、そちらを先に片づけなければと思い、布団の中で、僕は両者を行ったり来たりした。僕は、読んでいて実感したのであるが、良書は私を満たしてくれる、空腹でさえも満たしてくれるものである。僕はそれを再発見した。

 それから少し休んで、起きて軽く食事を摂ったところである。ブログを書こうと思って、これを書いているのであるが、時刻は0時を過ぎて、16日になった。最後のタバコを吸ってから9時間が経過している。喫煙欲求は今のところは無い。これから、朝まで眠るつもりである。タバコに手を出す心配はないが、枕元の「デイヴィッド・コパフィールド」に手が伸びてしまいそうになるのを、今は抑えている。この後、僕がこの誘惑に勝ったか負けたかを、いずれまた書きたいと思う。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー

 

 

 

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