11月15日:呆れる選択

11月15日(火)呆れる選択

 

 今日の休みは、本来なら図書館に行って、その足で職場に来て、大掃除の続きをやるという予定であった。しかし、昨日からの風邪で、体調は芳しくない。それでも、図書館には行っておこうと、なかなか行く機会がないから行っておこうと決めた。

 図書館で本を借りると、僕はその本は読まない。その本の読みたい部分をコピーして、そのコピーした方を読むのである。僕は本に書き込んだりする癖があって、以前、借りた本にうっかりして線引きをしてしまったことがある。それを避けようと思うのだ。

 朝の予定では、図書館に行き、本を借り、そのままどこかでコピーを取る。コピー代は1000円と予算を組んでおく。それから風邪で寒気がするから、お昼はラーメンでも食べたいなと考える。ラーメン代は600円といったところだ。その後、食後のコーヒーが欲しくなるだろうなと考え、コーヒー代400円を見込む。結果、今日は2000円あったら足りるぞということに決まり、財布にきっかり2000円だけ入れて、家を出たのである。

 ああ、しかし、私の立てた計画は果たされぬことになったのだ。図書館へ行く途中、古本屋さんがあって、僕は何思ったのか、そこにフラフラと惹きつけられるようにして入ったのである。ああ、そこで読みたい本と遭遇してしまったのである。思わず買ってしまった。この時、1000円分の買い物をしたのである。

 そして、更に、あろうことか、レジの前の棚にて、私が最近読みたいと思っている本を発見したのである。レジでお金を払っている瞬間にそれを見つけたのである。その本とはチャールズ・ディケンズの「デイヴィッド・コパフィールド」なのである。別に珍しい本でも何でもない。普通に本屋さんで買える作品である。ただ、長大な作品で、文庫本で4冊にまたがる。古本屋さんでも見かけるが、全巻そろっていなかったりするのである。この時、私が発見したのは全巻揃っていて、値段も600円だったのである。僕の中ではかなりお買い得と見えた。

 本を買ったので、僕は図書館行きを断念した。それでしばらく歩いている。風邪の影響でフラフラする感じがあった。しかし、頭の中では「デイヴィッド・コパフィールド」が騒ぎ始めていた。僕は財布の中身を何度も見て、葛藤する。お金はもう1000円ある。でもこれはラーメンのためのお金である。寒気がして熱いラーメンがとても魅力的に見えてくる。午後も遅くなっていて、ひどい空腹にも襲われている。僕はすごく迷った。ラーメンか「デイヴィッド・コパフィールド」か。

 決断した僕は、踵を返し、古本屋に戻る。そして、ラーメンではなく、「デイヴィッド・コパフィールド」の方を選んだのである。お蔭で、今日は昼食抜きである。体調も良くなく、空腹に襲われているのに、食事ではなく本の方を取ってしまった瞬間、僕は「これは病気だな」と思った。

 そう言えば、今朝、母から「あんた、また痩せたんちゃう?」と指摘された。確かにそうだ。ジーンズが先週穿いた時より、少し緩くなったように感じられる。腹回りに余裕ができている。最近、自分の身体に無頓着だったかもしれないと僕は思ったのだが、確かに痩せたかもしれない。でも、今日のようなこと、ラーメンよりも「デイヴィッド・コパフィールド」を選ぶというようなことをしていたら、痩せるのも当然かもしれない。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー

 

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