10月25日(火):ニコチン中毒克服記
10月23日 22:00(開始)
ちょうど最後の一本が吸い終わったところ。今から禁煙の開始。これから私にどういうことが起きて、どういう体験をするかを逐一書きとどめておこうと思う。
10月24日 1:00(3時間経過)
今の所、喫煙欲求はない。気分が良くないということも手伝っているかもしれない。呼吸が幾分楽になっていく感じがしている。家に帰って、資料整理等の作業をしていた。何かをしているとタバコのことは忘れられる。
僕のこれまでの禁煙失敗経験から分かるのだけど、タバコを止めて3,4時間経つと呼吸が楽になっていく感じがするのである。禁煙成功者に訊くと、そんなことはないと言うのだけど、僕にはそう感じられるのである。この辺りから快復の過程が始まっているのかもしれない。少なくとも咳に関しては、その回数がかなり減っている。
今から睡眠に入る。睡眠は救いである。寝ている間にも身体は回復のプロセスを経ていくだろうから。
10月24日 9:00(11時間経過)
昨夕はなかなか寝付けず。就眠したのは3時頃だったろうか。「タバコは欲しいとも思わない」と自己暗示をかけて眠った。これが功を奏しているかは分からない。
朝は少し寝坊してしまった。タバコを吸っていると血圧が高くなるというらしいから、測定してみる。今朝の測定では、上が110、下が74、心拍数59という結果だった。何も悪くはない。
ちなみの今朝は喫煙欲求は感じなかった。喉は昨晩よりも更に楽になって、空気の通りがいいのである。大きく息を吸い込むと、咳込んでしまうが、肺のしんどさも幾分ましになっている。咳はまったくと言っていいほどしていない。
9時前に職場に到着。約一時間の遅刻である。着いて真っ先にしたことは、灰皿を処分し、ライター等を片付けたことである。職場で禁煙することが、過去の経験からみて、一番難しいのである。
10月24日 12:00(14時間経過)
午前中は仕事でバタバタする。そのお蔭で、喫煙欲求は感じなかった。タバコのことは忘れて過ごすことができた。しかし、一段落ついたところで、ふとタバコを探している自分に気づいた。思わぬところで油断していた。僕は禁煙中だったのを意識して、何とか乗り切ろうとする。
指先のニコチン焼けの色が薄くなったように感じる。色の濃い部分がそのままなのだけど、周囲の薄い部分が消えていった感じがする。面積が狭くなったように思う。その代り、濃い部分が逆に引き立ってしまっている。
仕事をしていて気付いたのは、声を出すことが楽だということだ。発声しやすいのである。呼吸に関しては、大きく息を吸い込むと咳込んでしまうのは変わらずである。また、深呼吸を繰り返すと、喉のあたりがしんどいということも発見した。
10月24日 16:00(18時間経過)
喫煙欲求が昂ぶったまま、午後からの仕事を一件こなす。集中力を欠いて、うまくいかない。断続的に睡魔に襲われた。仕事が終わってから、銀行等の外回りに出る。外に出ていると、幾分、気分がましである。タバコなしで一か所にじっとしていることは、案外しんどいものである。
少しだけ時間が空いてしまって、今の間に休んでおく。この後は予定が詰まっている。タバコのことではなく、なるべくその予定のことだけを考えておこうと思う。
集中できず、神経過敏になる。外のわずかな音が気になる。イライラする感じがある。
10月24日 18:00(20時間経過)
ついに一本吸ってしまう。このままイライラしていたら、次の仕事に差し支える、クライアントさんに迷惑をかけてしまいそうだと思った。断念してもいいので、取り敢えず気分を鎮める必要がある。仕事に支障を来すよりも、断念する方がましである。面接の終わる18:30より再開することに決めた。
最初の一本は頭がクラクラするほど効いた。一つ分かったのは、これは「美味しい」ものではないということだった。
こうして僕の禁煙はわずか20時間で頓挫してしまった。その代り、得るところや学ぶところもあった。
(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)