9月19日:高槻カウンセリングセンター誕生秘話(5)

9月19日(月)高槻カウンセリングセンター誕生秘話(5)

 

(ハイエナ撃退法)

 当時の僕は、どんな人に対しても愛想よくしていなければならないという強迫観念に襲われていた。どの人と、この先どんな縁があるか分からないからだ。だから、嫌われんとこうと思い過ぎていたのだ。恐らく、この強迫観念には、僕がこの先一人でやっていくことに関する心細さも手伝っていただろうと思う。

 だから、答えは簡単である。ハイエナ連中から徹底的に嫌われて、二度とここには来るかと思わせればいいのだ。僕は、どんな嫌がらせが彼らにできるかをいろいろ考えた。いや、それは今も考えていて、そのいくつかは現在も実行中である。

 ある営業マンは、僕が机に向かって書き物をしている最中にドアを開けて入ってきた。僕は彼を無視する。「ごめんください」と何度彼が言おうと、僕は相手にしない。聞こえていても聞こえない振りをする。彼の存在を認めない。彼は諦めて帰る。叩きつけるようにドアを閉め、締めたドアを蹴飛ばす音が聞こえたが、それでも僕は無視する。彼は二度と来ないだろう。

 ある時は、いきなり「何しに来たん?」と相手より先に言ってやったり、「アポも取らずにいきなり来て、常識あるの?」とか言ってやったり、ドアを開けた営業マンに「誰がドアを開けてもいいと言った」と言ったりもした。「お邪魔してもいいですか」と尋ねる人に対して、「君が邪魔するのは勝手だけど、僕は君の邪魔を認めない」というようなことを言ったこともある。ひどい時には、営業マンに営業トークをさせておいて、「今の君の言動を報告するから、君の携帯で今からお宅の社長さん呼び出してくれんかな」と言ったこともある。ソフトバンクからの勧誘の電話(これは頻繁にあった)に対しては「孫は嫌いだ」の一言で電話を切る。こうやって追い返し作戦に出たお蔭か、だんだんハイエナには悩まされなくなってきた。

 こういう連中に煩わされるくらいなら、この世で孤立した方がはるかにましだと僕は思っている。その後も、僕のその時の気分しだいで、彼らは門前払いを食らわされるか、僕からイヤミを言われるか、仲良く話ができるかが分かれる。だから、これから僕の所へ営業に行こうと思っている営業マンは、僕の機嫌のいい時を狙って来た方がいい。しかし、いつ機嫌がいいかは、僕自身も分からない。

中にはいい営業マンもいた。その営業マンは今の会社を辞めたいとぼやいた。そこで、僕はどういう辞め方がいいかを彼に伝授したりした。もちろん、営業のことなどそっちのけでである。また、初対面で、名刺を交わし合った直後に僕が「君は今朝どんな夢を見た」と尋ね、夢の話ばかりして終わった人もある。

 まあ、さぞかし嫌な思いを皆さんされたことでしょう

 

(寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

(付記)
 営業に来た営業マンにいきなり、今朝どんな夢を見たと尋ね、夢の報告だけさせておいて、営業トークをさせないということはよくあったな。当時はいろんな人の夢を集めていたところだったから、サンプルに使わせてもらったものだ。しかし、何人かの営業マンからは、その後、個人的な感謝の手紙をいただいたこともある。やれやれ、一体、何が正しいのやら、分からないものだ。
(平成28年11月)

 

 

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