7月19日:歩いたことのない道を歩く

7月19日(月):歩いたことのない道を歩く

 

 今日は家の事情で仕事を休んでいる。特に告知もしていないけれど、まあいいかという気持ちだ。告知をして誰が見るでもないだろうし、困る人もそういないだろうと思う。先週の段階で決まっていたのでこの日は予約を入れないようにしていた。

 家の整理である。僕の身辺整理でもある。業者さんに来てもらうことになっていて、それが今日の14時から17時の間という、非常にザックリした予定を申し渡されていた。しかも業者の状況によってその時間は前後するかもしれないとのこと。作業は一時間程度で終わるだろうと思っていたが、開始がいつになるか不明であるために、ともかく一日空けておこうと決めたのだ。

 実際には12時半頃、「今から向かいます」というドライバーさんからの連絡があり、13時頃に作業開始となった。その作業も15分から20分くらいのものだった。業者さんも慣れているので仕事が速かった。おかげで13時半には予定終了という運びとなった。

 そこから高槻に出ようかと思い、一応、電車には乗ったものの、時間が中途半端だしなあという気持ちもあり、揺れ動く。どういうわけか阪急西向日駅で下車する。

 

 西向日駅。いつも通過するだけの駅で、ここで降りることは今までなかった。他の駅では下車経験があるけど、この駅ではなかった。一体、この駅周辺には何があるのか、散策してみようという気持ちになった。

 なかなかきれいな住宅街だ。桜並木の道があり、噴水公園がある。子供たちが水遊びしている。のどかな光景が飛び込んでくる。周辺にはお寺とか遺跡とかの類もあるようだ。いろいろ見て回ろうと思えばコースをきちんと立てておいた方がよさそうだ。

 長岡宮跡を見たかったが、どうも道を間違えたようだ。細い道が変な角度で入り込んでいたりして、京都市ほど分かりやすくない。予めコースを確認しておくべきだったと後悔する。

 結局、物集女街道まで出て、そこから京都方面に歩く。常夜灯まで出る。駅方向に入ると長岡宮跡に出れるのかもしれない。でも、僕はそこから足を延ばして、まずは向日神社を参詣することにした。

 街道からすぐに鳥居があり、参道が長く続いている。参道を歩いているのは僕だけだったのでとても閑静だ。ちょっと別世界に来た気分になる。社殿は思っていたよりも立派な作りだった。お参りを済ます。社殿の前に左右に道があり、裏の方へ回れるようだ。行ってみる。ちょっとした林がある。小さな祠なんかもいくつかある。子供たちが昆虫採集していた。久しぶりに人の姿を見た気分になる。

 そこから下に降りる石段が続いている。どこに出るのか、僕は石段を下っていく。ああ、この石段、膝に堪える。エッチラ、オッチラとぎこちなく一段一段降りていく。道路に出る。これは洛西方面から続く道だなと察しがついた。それにしても、こちらから見るとなんの標識もなく石段が現れるので、これが向日神社に続いているとは思えない感じだ。なんだか、物集女側は立派なだけに、裏側は貧相だなと思ってしまった。

 さて、ここからどうしよう。洛西方面に向かって歩いてみるか。炎天下を歩く。さすがに疲れてきた。どこかに休憩できるところはないかと思っていると、いい具合にそれが出てきた。パチンコ屋である。

 えーと、「新世界」だったかな、そういう名前のパチンコ屋で、メチャメチャ広い。店内の端から端まで100メートルくらいあるんじゃないか(言い過ぎか)と思った。おまけに電気の無駄遣いかとツッコミたくなるほどでっかい自動ドアを開けて入るのだ。まずは喫煙所を探す。あったあった。そこで一服。

 喫煙を終えると、何か飲もうと傍の自動販売機に立つ。いつもならお水を選ぶ。でも今日はジュースを飲もうと思った。炭酸系は気分ではないので、フルーツジュースをチョイス。一口飲む。甘味が口中に広がる。冷たくておいしい。どういうわけか、これに幸せを見いだせなければならないという気持ちになる。一本のジュースを存分に味わい、満喫する。

 さて、パチンコも打たんくせにお店に長居するわけにもいかないので、ウオーキングを続けよう。再び無駄にでっかい自動ドアを開けて外に出る。改めて今日の暑さを感じる。バス停が見える。バスに乗ってどこかへ行こうと思い立つ。バス停に向かう。その矢先にバスが追い抜いて行ってしまう。要するにギリギリ乗り損ねたのだ。運行表を見ると、この道は東向日駅に続いているようだ。それなら、洛西に向かわずに、東向日を目指そうと思い、歩き始める。

 向日神社でそうだったように、丘を一つ越えなければならない。人も車も少なく、静かだ。それに、歩いたことのない道を歩いてみるのも楽しいものだと思い始めている。近場でもそういう道がたくさんあるものだと思う。そういう道を踏破していくのも面白いかもと思った。丘を登りきる。なるほど、向日町競輪場の脇に出るのか。

 物集女街道に出て、そこから斜めに入っている道を行くと東向日に着くはずだ。この辺りの街並みも僕は好きだ。適度なローカル感があって、どこか懐かしい感じを覚える。しばらく歩くと駅に着く。時刻は16時半頃。

 そこからまたもやパチンコ屋に入る。一服だ。何か食べて帰ろうかなどと考え始めている。要するに、もう少しすると呑み屋なんかが開くので、冷たいビールなんぞを呑んで帰ろうかと考えているわけだ。ああ、でも、今日は止めだ。ビールに幸せを覚えてはいけないのだ。汗をかいた後のフルーツジュースが正しい幸せだ、などと思い、駅に向かう。それでもちょっと後ろ髪を引かれる思いがある。雑念を振り払って改札を通る。

 あとは電車にのって帰宅という流れだ。帰宅後は軽く食事をして、疲れたので横になる。うたた寝をしてしまう。そこから起きて、今日はまだ何も読んでないと気づき、小説を一冊読む。そうして今日の一日が終わる。仕事を休んだけれど、その分、有意義且つ健康的に過ごした。

 

(寺戸順司-高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー)

 

 

 

 

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