#10-11>出会いから結婚まで~婚約期(1) 

 

(婚約期) 

 交際期から婚約期へ、そこに境界線を明確に引くことはやはり困難でありますが、二人の間で結婚の話がまとまるようになれば、そこを婚約期の開始としておきましょう。それは正式な婚約でなくても構いません。しかし、一方が結婚を申し出て、他方が結婚を渋っている状態は、まだ婚約期とはみなさないでおきましょう。 

 従って、婚約期もまた交際期と重複するところがあります。交際期との違いは、婚約期では二人の間に「結婚」という概念が入り込んでいるところであります。 

 さて、婚約期は二人がとかく忙しくなります。双方の親に挨拶することも含め、友人や知人にも報告します。結婚指輪を準備したり、諸々の作業をしなければならなくなります。挙式するのであれば、結婚式の段取りもしていかなければなりません。新婚旅行の手配もしなければならないでしょうし、新婚旅行後の新生活のことも準備しなければなりません。結婚する二人にとっては多忙を極める時期でもあります。 

 上手くいく夫婦では、おそらくだけれど、この時期はいくら多忙とは言え、それなりにスムーズに事が運んでいくのでしょう。上手くいく夫婦のことを知らないので想像で言っているのですが、それなりに円滑に物事が進むのではないかと私は思っています。 

 上手くいかない夫婦は、ただでさえ多忙になるこの時期に、さまざまな困難が二人にのしかかってしまうのです。婚約して結婚までが難渋するのであります。そういう話を私はよく聞くのであります。 

 婚約から結婚まで、この一連の流れを妨害するものは何でしょうか、何が当事者である二人のさらなる負担になるのでしょうか。それはさまざまあるでしょうけれど、三点ほど取り上げようと思います。それぞれ反対者、無関心、焦点化と名づけておきましょう。 

 

(反対者) 

 二人が結婚すると決めるのはいいとしても、その結婚に反対の意を表明する人が出てくるのです。時に、彼らはこの反対者を説き伏せなければならないこともあります。 

 当事者の友人や知人が反対者となることがあります。これはけっこう多いのです。「あの人と結婚する」と友達に報告すると、「あの人はやめておいた方がいいんじゃない」などと友達から返されたとかいう話は、上手くいかない夫婦からはよく耳にするのであります。結婚相手のことも知っているという友人からそのような忠告をされてしまうのであります。 

 実は、私はこの友人の言葉を少し信用するのであります。当事者よりも友人の方がより客観的に相手を見ることができている場合があると思うからであります。当事者は、すでに述べたように、自分の中で形成されたイメージを相手に見ていることがあるので、そういうイメージが形成されていない友人の言葉は少し信用してもいいようにも思えるのであります。 

 この場合、友人たちは、この人の結婚相手のどこか「悪い」部分が見えているということになります。どういう理由で、あるいは相手のどういうところを見て、結婚に反対しているのか私は知りたいと思う時があります。ただ、この人たちも反対する理由があまり明確でないこともあり、あるいは正確に言語化できない場合もあるようで、当事者も友人から反対される理由が分からないと言うこともけっこうあるのです。 

 また、反対者が一人だけのこともあれば複数人いることもあります。反対者が一人だけの場合、その人の個人的感情と見ることも可能でありますが、何人もの友人知人からその人との結婚は止めた方がいいとか、考え直した方がいいなどと忠告されていたりすると、その結婚相手には何か問題がある、あるいは問題がある人間として見られれていることになります。複数の人が相手の同じ所を問題視していることもあれば、反対者によって問題視しているところが違っていることもあるようです。 

 

 今のは当事者の友人知人が反対するという例でしたが、当事者の家族が反対することもよく見られることであります。この場合、子供の結婚そのものを認めないという場合と、結婚はいいがその相手との結婚は認めないという場合とがあります。そして、時に両者は同時に表明されることもあります。 

 また、反対するのが、母親だけの場合、父親だけの場合、両親二人ともの場合、両親は賛成だが他の子(兄弟姉妹)が反対の場合、母と子が反対している場合、父と子が反対している場合など、さまざまな形態があります。さらには家族だけでなく、親族までもが反対するというようなこともあります。 

 さらに、当事者が説得して結婚を認める場合と、あくまでも結婚に反対する場合、さらには親たちが子たちの結婚後もその結婚に反対し続ける場合、父親は諦観しているけれど母親は今でも反対し続けるなど、親たちの反応もさまざまであります。 

 これらはすべて家族力動によって異なるものであり、ここでは詳しく述べる余裕がないでしょう。機会があれば別の個所で取り上げたいところであります。 

 今述べたようなことが当事者一方の家族に起きていることもあれば、相手の家族にも同じことが起きているということもあります。双方の親たちがこの結婚に反対しているということもあります。 

 ちなみに反対の理由は何でもありなのです。こういう理由でその結婚には反対だと言う場合もあれば、結婚に反対する感情が先にあって後から理由が見つけられるということもあるのです。実際、後者のような例はけっこうあるのです。つまり、一つの反対理由を説得しても、親たちは次の理由を探し出すのであります。彼らは結婚までに延々と親を説得しなければならなくなるわけであります。 

 さらに話をややこしくさせてしまうのですが、親たちの反対が当事者の婚約期に始まる場合もあれば、交際期にすでに始まっている場合もあり、潜伏期の時点ですでに「友達のだれそれさんのような人とは結婚しないでくれ」と念を押して言っている場合もあります。 

 それでも親たちの反対を押し切って結婚したとしましょう。結婚後、彼ら夫婦でトラブルが生じた場合、当事者は親たちに助けを求めることに躊躇するのですが、反対していた親たちほど助けを求める子供を受け入れるのです。そして、反対しなかった親たちは夫婦がよりを戻すように子供を手助けしようとするのですが、反対していた親たちは夫婦が別れるような援助をするのです。あるいは、表面的にはよりを戻すような援助をしておきながら裏では離婚を助長するような援助をしたりするのです。「夫婦が上手くやっていくために別居したらどうだ」というような助言はその典型であると私は思っています。 

 一番困るのは本心が分からない親であります。口では「お前の好きになった人と結婚したらいい」と言っておきながら、本心ではその結婚に反対している親であります。口ではそう言っておきながら、何かと子供夫婦に口出しするというようなことを、この親たちはするかもしれません。そして、夫婦間のトラブルで困った時、彼らはこの親に相談していいのかどうかで大いに悩むこともあるようです。親の態度がどっちなのか分からないので、言い換えれば自分の敵となるか味方となるかの確信が持てないので、親に相談することをためらうということもあるようです。 

 

 上手くいかない夫婦では、婚約期において、反対者が見られることが稀ではないのです。そこにはさまざまなパターンがあり得るのです。その一つ一つを考察してみてもいいのですが、本節の趣旨から外れることになるので、それは別の機会に譲りたいと思います。私たちは論述を先に進めていきたいと思います。 

 

(文責:寺戸順司―高槻カウンセリングセンター代表・カウンセラー) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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